広告宣伝費を見直す


  ■企業活動で発生するコスト

   コストダウンは、“目に見えやすいコスト”が削減の対象となりがちです。

   例えば、業務の効率アップのためのパソコン購入であっても、何十万というまとまった
   コストの発生が目に見えるために先送りになるケースがあります。

   しかし、これは正しいコストダウンではなく、一時的なコストの回避策でしかありま
   せん。

   ましてや、パソコン購入による業務効率のアップも達成できず、企業の体制は旧態
   依然としたままです。

   正しいコストダウンにおいて、削減対象とすべきは「利益を生まない活動から生じる
   コスト」です。

   利益を生み出さない活動にはムダ、ムラ、ムリがあり、そこから生じるコストこそが問題
   なのです。

   削減対象となるコストを見極めるためには、財務諸表の一般管理費の推移を確認し、
   コストダウン推進委員会などが中心となってムダ、ムラ、ムリの調査を進めることが
   重要です。

   これには多くの時間や手間がかかりますが、正しいコストダウンを推進することを決定
   したのであれば、コストダウン推進委員長(社長)の強力なリーダーシップのもとで進め
   ていくことが欠かせません。

   会社のすべての活動は連続的に関係し合っています。

   そのため、特定分野のコストを削減した結果、他分野に悪影響を及ぼす危険性もある
   ため、コストダウンを推進した後も、全体的な視野でコスト発生状況を確認し、フォロー
   を続けていくことが欠かせません。

  □広告宣伝費を見直すための基本

   1.広告宣伝費の「正しいコストダウン」

     広告宣伝費を見直し正しい方法で削減するために、改めて「広告宣伝」という
     ものに対する認識を明らかにしておきましょう。

     (1)広告宣伝に対する認識

       広告宣伝は、自社にとって「利益を生み出す」ための戦略の一つであって、
       広告宣伝を行うことで会社の利益を圧迫することがあってはならない。

       上記の認識は、広告宣伝方法を見直したり、広告宣伝費を削減するうえで
       の基本認識となります。

       また、自社における正しいコストダウンとは、ただ単純にコストを○%削減す
       ればいいというようなものではありません。

       広告宣伝費を見直す際には、以下のようなコストダウンに対する基本認識
       を心に刻み込んでおく必要があります。

     (2)コストダウンに対する認識

       正しいコストダウンとは、自社の生産性を高め、利益を向上させるものでな
       ければならない。  

       つまり、コストダウンをしなければならないからといって、広告宣伝費をむや
       みに削減することで、広告宣伝の質が悪くなり製品やサービスの認知度が
       低下し、結果的に企業の売り上げや利益を減少させたりすることがあって
       はならないのです。

       広告宣伝費の正しいコストダウンとは、自社の広告宣伝を見直し、ムダ、ム
       ラ、ムリを発見し、それを正すことによって自社の利益を向上させるような
       最適な広告宣伝を実現することなのです。

   2.広告宣伝を見直す

     ・あなたの会社は今どのような広告宣伝を行っていますか?

     ・その広告宣伝は自社にとって本当に必要ですか?

     ・その広告宣伝は自社の利益にとって本当に適正ですか?

     広告宣伝費の見直しを検討する際、この「自社の広告宣伝に対する内なる問
     いかけ」が大きな第一歩となります。

     会社はさまざまな方法で製品やサービスの広告宣伝を行います。

     顧客に直接アピールする機会となる広告宣伝は、会社にとって重要な戦略の
     一つです。

     しかし、ただ単純に広告宣伝を行えば製品やサービスが売れるというわけで
     はありません。

     広告宣伝方法が的外れなものであったり、明確な目的がなく「なんとなく」行っ
     ているものであれば、その広告宣伝は自社の利益に貢献するどころか、ムダ
     な広告宣伝費を発生させ、事業活動の足を引っ張ることとなるでしょう。

     このような製品の売り上げ増に結びつかないような誤った広告宣伝から発生
     する広告宣伝費は、利益を生まない活動から生じるコストそのものです。

     例えば、ターゲットを「静岡県下の法人」に絞った販売戦略を立案しているコ
     ピー機製造メーカーA社がいたとします。

     A社が以下のような広告宣伝を行っていたとしたら、果たしてそれはA社にとっ
     て「正しい広告宣伝」といえるでしょうか?

      両面フルカラー高速コピー機を若手お笑いタレントを起用し、コント形式での
      全国放送の10代向け深夜のラジオ広告のみで広告宣伝している

     顧客ターゲットが「静岡県下の法人」であるにもかかわらず、上記のような広告  
     宣伝をしていたのでは顧客に対する訴求力があるとはとても思えません。

     まず第一に、選択している媒体がラジオであっていいのかどうかが非常に疑
     問です。

     なぜなら、コピー機の「両面フルカラー」「高速」といった性能や外観を言葉の 
     説明のみで正確に伝えるのは非常に困難なためです。

     さらに、販売拠点が東北地方なのであれば地域限定の広告宣伝のほうがより  
     訴求力があるかもしれません。

     また、地域限定のほうが全国ネットに比べてよりコストを削減することができる
     でしょう。

     起用するタレントや、「コント形式」などの広告の企画も見直す必要があるかも
     しれません。

     このように、自社の販売戦略と方向性が異なる広告宣伝を行っているなら、そ
     もそも広告宣伝の意味を成さないと言わざるを得ません。

     従って、その広告宣伝のために発生するコストは「ムダ」であり、見直す必要が
     あります。

     このムダなコストを削減し、自社にとって利益をもたらす「正しい広告宣伝」を
     実現することが必要です。

     このように、広告宣伝費の正しいコストダウンでは、広告宣伝の妥当性を見直
     すことが重要で、これにより、自社にとって利益を生まない広告宣伝を、利益を
     生み出すような正しい広告宣伝へと導いてくれるのです。

  □広告宣伝を見直すための基本的な考え方

   これまでみてきたように、広告宣伝費のコストダウンには「自社の広告宣伝の妥当性
   の見直し」が欠かせません。

   これを行わず、ただむやみに広告宣伝費を削減してはならないのです。

   では、どのようにして「自社の広告宣伝の妥当性の見直し」を行ったらよいのでしょう
   か?

   ここでは、自社の広告宣伝の妥当性の見直しの基本的な考え方をみてみます。

   1.広告宣伝を見直す際の確認事項

     広告宣伝を見直す際に忘れてならないのは、

      ・広告宣伝は、会社の売り上げを伸ばし、利益を向上させる

      ・広告宣伝は、それ以外の要素と組み合わさって成り立っている

     ということです。

     広告宣伝は、会社の利益を向上させるための戦略の一つです。

      ・利益を増加させるために自社は何をしたらよいのか

     という、会社の方向性や

      ・自社は「何を」「だれに」「いくらで」「どんな手段で」「どれくらい」 
       売りたいのかという販売の計画などと関係し合っています。

       広告宣伝の見直しを行い妥当性を検討するためには、まず、自社の方向
       性を確認しておくことが大前提となります。

     そのうえで、

      ・どんな製品を(販売したい製品を知る)

      ・誰に対して (販売したいターゲットを知る)

      ・どんな風に (販売の方法を知る)

     などの基本的な事項を明確にしておく必要があります。

     自社の方向性の確認や、それに基づく基本的事項を明確に把握しておかなけ

     れば、先に紹介したコピー機製造メーカーA社のように、的外れな広告宣伝を
     行うことになってしまいます。

     A社は、

      ・どんな製品を →両面フルカラー高速コピー機を

      ・だれに対して →静岡県下の法人に対して

      ・どんな風に  →家電量販店での店頭販売や通信販売で

     というように、基本的事項を明確にしておけば、それに即した広告宣伝を検討
     し実行することができたでしょう。

   2.プロモーション活動のバランスを検討する

     広告宣伝を見直す場合、販売促進など、広告宣伝以外のプロモーション活動 
     とのバランスの取れた組み合わせを考える必要があります。

     プロモーション活動には、主に次の4種類の基本的な手法があります。

      広告宣伝:有料の媒体を利用することによるメッセージの提示

      人的販売:人による、あるいは人と人との接触による販売活動

      販売促進:クーポン券発行など、購買意欲を高めるためのあらゆる活動
      パブリシティ:自社の情報が媒体に掲載されるための広報活動

     現実的には、企業は、上記の4つの手法を組み合わせて、広告宣伝のほか、

     人的販売や販売促進といったプロモーション活動を行うはずです。

     例えば、ドラッグチェーンなどでは、テレビ広告や雑誌広告、店内のPOP広告
     に加え、店頭での販売員の呼び込みなどによる人的販売、クーポン券やサー
     ビスカードの発行などの販売促進など、広告宣伝のほかの手法を組み合わせ 
     てプロモーション活動を行っています。

     会社は、先に確認した基本的事項「何を」「だれに」「どんな風に」に基づいて、

     4つの手法を適正なバランスで組み合わせることを検討しなければなりませ
     ん。

     どの手法を選択してどのように組み合わせればよいのか、あるいはどの手法
     に注力するのかを考える必要があるのです。

     その結果、広告宣伝にあまり重きを置かず、販促活動や人的販売に注力した 

     ほうがよいのであれば、それによって広告宣伝費が削減され、その余剰分の
     コストをサービスデーの開催や販売員の提案力の向上に力を注ぐなど、ほか  
     のプロモーション活動に転用することも可能になるのです。

     これまでみてきたように、「広告宣伝は企業の方向性などを反映した企業戦略 

     の一環である」ため、広告宣伝費の見直しを行う場合、「広告宣伝部門では広
     告宣伝費を今期○%削減する」といった目標を立てることがあったとしても、実
     際には、広告宣伝部門内だけで広告宣伝費の見直しを完結させることは非常
     に困難なケースが多いでしょう。

     大元になる自社の方向性を確認し、それに基づいて製品開発部門、営業部

     門、販売部門などと連携しながら、プロモーション活動のバランスの取れた組
     み合わせを検討する必要があるでしょう。

  広告宣伝費を見直すためのフローチャート
   これまで、広告宣伝費を見直す基本認識をみてきました。この基本認識に基づいて
   広告宣伝費を見直す流れを確認してみましょう。
   広告宣伝費を見直すには、

   まず第一に企業の方向性およびそれに基づくプロモーション活動の検討・把握
   必要です。


   それを踏まえたうえで広告宣伝費を見直すことになります。

   ポイントは、広告宣伝費の見直し手順が「3ステップサイクル」になっているという
   ことです。

   第1〜第3までのステップに沿った実行は、決して一度実行してしまえば終わりという
   わけではありません。

   サイクル形式で繰り返し行われるべき取り組みなのです。

   1.第1ステップ〜広告宣伝におけるムダ、ムラ、ムリの発見〜
    第1ステップでは、自社の広告宣伝の現状や広告宣伝媒体の種類を把握すること
    などによって、自社の広告宣伝におけるムダ、ムラ、ムリを発見します。

    この第1ステップでのポイントは以下の3視点からの「現状の把握と分析」です。

     (1)自己分析:自社企業の広告宣伝に関する現状を把握
     (2)広告分析:媒体の種類を把握するなど広告宣伝そのものの現状を把握
     (3)周辺分析:競合他社の広告宣伝の現状を把握


    広告宣伝費の見直しに当たって、まず、自社企業の行っている現状の広告宣伝費、
    広告ターゲット、広告している製品などを把握しておく必要があります。

    現状を明確に把握することによって、これまで当たり前のように行われてきた
    広告宣伝のムダ、ムラ、ムリを発見することができるかもしれません。


    広告分析で行うのは、「広告宣伝にはどのような種類があって、その価格帯は

    どうなっているのか」などの「広告宣伝そのものの把握と分析」です。

    自社企業の広告宣伝におけるムダ、ムラ、ムリを発見するためには、自社企業の
    現状の広告宣伝と比較できるようにするために、広告宣伝とはどのようなもので、
    どのような種類の媒体があり、どのような種類の方法があるのかを把握しておく
    必要があります。

    また、自社の広告宣伝を取り巻く環境を分析することも非常に重要となります。

    これが周辺分析です。

    まず競合他社の行っている広告宣伝や、広告宣伝のトレンドを把握・分析し、
    自社企業の現状の広告宣伝と比較します。
    このように、3視点からの把握と分析の結果を組み合わせて、あるいは比較して
    ムダ、ムラ、ムリを発見し、広告宣伝計画の見直しへと進むのです。


   2.第2ステップ〜ムダ、ムラ、ムリの発見に基づく広告宣伝の見直し〜

    第1ステップのムダ、ムラ、ムリの発見に基づき、第2ステップでは広告宣伝
    そのものを見直して改善し、その改善案を実行していきます。ムダ、ムラ、ムリを
    正し、「正しい広告宣伝の実行」ができるよう、自社企業の広告宣伝に利用する
    媒体や広告ターゲット、広告宣伝の方法、そして広告宣伝費などを適正なものに
    するのです。


    これにより、自社の広告宣伝が、ムダ、ムラ、ムリを回避した正しい広告宣伝、
    つまり、

     ・訴求力がある
     ・利益につながる
     ・ムダなコストが発生しない
     ・自社企業の方向性に合致している

    の4つの項目を満たす広告宣伝に近づくことができます。

   3.第3ステップ〜広告宣伝の効果を常に測定〜
    第3ステップでは、「正しい広告宣伝の実行の結果のチェック」を行います。

    広告宣伝の見直しに基づいて、改善策を実行した後は、常にその効果を測定し、
    改善策が適正であったかどうか、利益に貢献しているかどうかをチェックする
    ことが非常に重要です。

    効果をチェックする方法としては、例えば、アンケートなどの定量的調査や、
    インタビューなどの定性的調査の両方を組み合わせた広告効果測定を行ったり、
    自社売り上げに占める広告宣伝費の割合を、正しい広告宣伝を行う前と後で比較
    してみるなどの方法があります。

    広告測定には手間もコストもかかりますが、「正しい広告宣伝のサイクル」に則って、
    効果測定から再び「広告宣伝におけるムダ、ムラ、ムリの発見」へと移行し、
    より理想的な広告宣伝計画の見直しを行うためには、広告効果測定は欠かせない
    のです。

    広告宣伝費の見直しには、以上の3ステップサイクルを絶え間なく循環させ、
    常に「正しい広告宣伝」を模索し続けることが大切です。
    広告宣伝費における「正しいコストダウン」には「ゴール」はありません。

    継続的に、しかもひたすら勝つこと(企業の利益を増加させること)を目標に
    行われる戦略、つまり「ノーゴールで勝つための戦略」なのです。


  広告宣伝を行わないという考え方
   これまで、広告宣伝費の正しいコストダウンを行うための基本認識として、広告宣伝を
   見直す際の考え方やステップをみてきました。
   広告宣伝を見直すには、まず、企業の方向性を確認しましょう。そのうえで、「何を」
   「誰に」「どんな風に」「いくらで」「どれくらい」などの自社の販売の計画を
   明確にし、それに基づいて4つのプロモーション活動のバランスの取れた組み合わせを
   考える必要があります。


   なぜなら、これを行うことこそが、広告宣伝におけるムダ、ムラ、ムリの発見に

   つながるものであり、発見されたムダ、ムラ、ムリを正して生産性を高めるのが、
   正しいコストダウンといえるのです。
   ここで注目したいのは、プロモーション活動のバランスを検討した結果、
「広告宣伝
   を行わない」という選択肢も存在する
ということです。

   例えば完全地域密着型のケーキ店で重点的に行うプロモーション戦略は、テレビ
   広告や雑誌などの広告宣伝を行うよりも、訪れてくれる地域の顧客に対して接客
   によってコミュニケーションを深めるような「人的販売」が効果的でしょう。

   その人的販売に加え、地域顧客に対してクーポン券を発行したり、サービスデーを
   設けるなどの「販売促進」を行えばより効果は上がるでしょう。


   全国紙の雑誌に毎月何十万の広告宣伝費をかけてケーキの広告を掲載するより、

   はるかに廉価でケーキの売り上げを増加させることができるでしょう。

   このように自社企業の方向性やプロモーション活動を検討した結果、「広告宣伝を
   行うことは適正ではない」という結論が出た場合には、
広告宣伝そのものをカット
   してしまう勇気も必要です。


   広告宣伝を行い、適正ではないプロモーション活動を展開することは、企業にとって
   「ムダそのもの」です。

   生産性を高め、利益を向上させるためには、前述したケーキ店のように、
   「広告宣伝をやめること」を断行しなければならないケースもあるでしょう。


   あくまでも、企業が広告宣伝の見直しを行う目的は、利益を生まない活動から生じる

   コストを削減し、生産性を高め、利益を向上させるような正しいコストダウンを
   実現する
ということであるのを、忘れてはなりません。


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