経営方針(計画)発表会


  ■経営方針(計画)発表会の意義

   新年度を間近に控えて、来期の経営計画策定や中期経営計画の見直しを急いでいる
   会社も多いでしょう。

   これらの計画は策定するだけではなく、会社全体の行事として「発表会」を行うことで、
   計画の一層の浸透や社員の一体感の醸成につながります。 

   そのため多くの会社で経営計画発表会が行われていますが、なかには「せっかく発表会
   をしたのに何も効果がなかった」と感じている社長もいるようです。

   また、一度このように感じた社長は翌年から開催そのものを取りやめてしまうケースも
   少なくありません。

   ここでは、経営計画発表会の意義と開催までの手順、当日の効果的な進め方について
   紹介します。

   1.経営計画発表会で「区切り」をつける

     私たちは元日や自分の誕生日などの節目のときに「今年こそはこうしたい」と
     いう新たな決意をもちます。

     それまでの1年間を振り返り、できたこと、できなかったことを再確認し、フレッ 
     シュな気持ちでスタートを切ります。

     また、自分を支えてくれている人への感謝の気持ちを改めて感じる人も多いで
     しょう。

     会社経営においてもこのような「区切り」をもつことはとても大切です。

     苦しい経営環境が続く昨今だからこそ、全社員が「来期こそは」と頭を切り替え
     ることが必要です。

     そして、その場としてもっともふさわしいのが年に一度の経営計画発表会で
     す。

     私も多くの会社の経営計画発表会に同席したが、発表会終了後には社長も幹
     部も一般社員も皆やる気に満ちた顔をしていました。

     そして、自分たちが「支えて支えられている」ことを確認し、一層の連帯感が生
     まれています。

     経営計画発表会は年に一度、全社員が自社の現状とめざすべき姿を確認し 
     合う絶好の機会であり、会社行事のなかでも最重要といえるものです。

   2.社長にとっての経営計画発表会

     では、社長にとって経営計画発表会とは何でしょうか。

     それは「自分は会社や社員をこのような方向に導いていく」という決意と約束
     の表明の場に他なりません。

     「自分は腹を括っている」という姿勢を全社員に直接示すということです。

     そして、経営計画発表会は考え抜いてつくり上げた自社の中期経営計画業計画
                「社長だけの羅針盤」から「社員全体の羅針盤」に変えていく場でもあります。

     社長の頭の中だけで経営計画を考えているうちは、多少あいまいな部分が
     あっても目をつぶっておくことができます。

     しかし、それを社員全体の羅針盤として提示するためには、「なぜ自分(社長)
     はこうしたいと思うのか」、そして、「なぜそれができると思うのか」なども含めて
     クリアにしておく必要があります。

     このように経営計画発表会は社長にとって強い決意を示す場であり、経営計
     画をブラッシュアップする(せざるを得ない)ための絶好の機会ということができ
     ます。

   3.社員にとっての経営計画発表会

     社員たちは自分の生活の多くの時間を会社で費やしています。

     そして多くの社員は今後も会社と共に歩んでいこうと考えているでしょう。

     彼らが自分の人生について真剣に向き合うためには、自分の現場だけではな
     く、会社全体の現状や今後の計画についても理解しておく必要があります。

     朝礼などで社長が話す機会を設けている会社もありますが、そのような場では 
     時間も限られており、話題もその時々の問題などが中心になりがちです。

     経営計画発表会は、社員が会社と社長の考えについて、体系的に話を聞ける
     数少ない機会です。

     特に普段社長とあまり接する機会のない一般社員にとっては唯一のチャンス
     といえるかもしれません。

     また、会社への理解を深めるために社員の家族を発表会に招待する会社もあ
     ります。

   4.外部関係者にとっての経営計画発表会

     経営計画発表会には、来賓として主要取引先や金融機関などの外部関係者
     を招くことも有効です。

     彼らに社長の思いや経営計画を十分に理解してもらい、自社の「応援団」に 
     なってもらうことは今後の付き合いのなかで重要です。

     また、来賓代表に挨拶をお願いし、社員に自社が外部からどのような評価を
     受け、どのような期待をされているかについて分からせることで、社員の動機
     づけにもなります。

  □発表会の準備

   経営計画発表会の準備は以下のような手順で行います。

   1.社長による開催表明

     社長自身が全社員に対して経営計画発表会開催を表明します。

     その際には発表会開催の目的や発表会に全社員が集うことの意義などにつ
     いても説明します。

     たんに「我が社でも経営計画発表会を行うことになった」という伝達ではなく、
     「自社の将来のためには絶対に発表会が必要である」という強いメッセージを
     打ち出します。

   2.プロジェクトチームの発足

     発表会の準備、当日進行を受け持つプロジェクトチームを発足します。

     責任者は経営幹部のなかから任命しますが、プロジェクトメンバーは複数の異
     なる部門の若手社員中心に構成し、一体感のある発表会につなげます。

     具体的には以下のようなメンバーを選出します。

      ・プロジェクトリーダー

      ・当日の進行役(司会者)、タイムキーパー

      ・会場設営責任者

      ・当日配布物準備責任者

      ・プロジェクターなどの操作係

      ・写真・DVD撮影などの記録係

      ・来賓受付担当者

     プロジェクトメンバーに対しては、社長から発表会の狙いや伝えたいことなどを
     直接説明し、発表会成功への十分な動機づけを行っておくことが必要です。

   3.開催日時・場所の決定

     (1)日時

       ・新年度スタート日にできるだけ近い日に設定する

       ・原則として全社員が参加可能な日を選ぶ

       ・外部からの来賓を招く場合は先方との調整も必要

     (2)場所

       ・自社会議室で開催できない場合は貸し会議室等の利用を検討する

       ・リラックスして話を聞けるようなできるだけ広いスペースを確保する

       ・会場設営や各種機器チェックなどの準備や後片付けなどの時間も考慮し
        た予約が必要

       ・発表会後に懇親会などを行う場合は別途手配する

   4.社員配布用経営計画書の作成

     経営計画発表会では社員に計画書を配布し、それを説明しながら会を進めて
     いくのが基本です。

     計画書は今後1年間社員が手元に置いて毎日のように見返すものですので、
     計画書の内容をいかに分かりやすく、かつ充実させるかが大きなポイントとな
     ります。

     装丁についてはコピーなどでも構いませんが、厚紙の表紙をつけるなど「特別
     感」の演出も必要です。

     なお、経営計画書は社外秘資料ですので、表紙などにその旨を明記します。

     また、1部ずつ通し番号を振って、どの社員に何番の計画書を渡したかの管理
     も行いましょう。

     社員配布用の経営計画書は次のような構成が目安になるでしょう。
      1.社長メッセージ

      2.経営理念、経営方針、行動指針

      3.前期の振り返り

      4.長期ビジョン、中期経営計画

      5.今期全社事業計画

      6.今期部門別事業計画

      7.個人計画記入用フォーマット

     営計画を社員一人ひとりの目標や行動に結びつけるためにも「7.個人計画記
     入用フォーマット」を必ずつけ、発表会終了直後に本人に記入させましょう。

     具体的な記入項目としては、
      ・3年後の自分の姿(保有能力や会社での役割などについて)

      ・今期の自分の重点目標、キャッチコピー

      ・「これだけは達成します」という宣言

     などが考えられます。

       経営方針書作成マニュアル(手順書)についてはこちら

  □経営計画発表会のプログラム例とポイント

   1.プログラム例

     経営計画発表会当日のプログラム例は次のとおりです。

     あらかじめタイムスケジュールをつくってタイムキーパーは時間管理を徹底し
     ます。

     経営計画発表会のプログラム例(発表者)
      1.経営理念 雀宮方針 行動指針 前期スローガノ唱和(全員)

      2.開催宣言(司会者)

      3.来賓紹介(司会者)

      4.社長メノセーノ(社長)

      5.経営理念 経営方針 行動指針解説(社長)

      6.前期総括と健営計画発表(社長)

      7.各部門の前期総括と部門計画発表(部門長)

      8.各種表彰式(司会者)

        ・業績功労社員  ・永年勤続社員  ・社長特別賞

      9.内定者紹介(司会者)

     10.社員代表による決曹表明(社員代表)

     11.社長による総括(社長)

     12.閉会宣言(司会者)

   2.社長発表部分のポイント

     上記の「プログラム例」より、社長の発表部分のポイントについてまとめます。

    4の「社長メッセージ」
    発表会開催にあたっての社長の思いや、今後の計画を考えるうえで、あらかじ
    め社員に理解して欲しいことなどを説明します。

    発表会全体の基調となる部分であり、社員に確実に伝わるように十分な時間を
    取ります。

    具体的には次のようなことについて説明するとよいでしょう。

     ・事業計画発表会の意義、開催を決意した背景

     ・会社創業または自分が社長を引き継いだ当時の思い

     ・創業から現在までの沿革、主要な出来事、業績推移

     ・会社運営に対する社長の考え方、覚悟、決意、社員への感謝の気持ち

    5の「経営理念経営方針行動指針解説」
    経営理念は「自分たちはこうありたい」という会社の存在意義を示したもので、 
    長期ビジョンや中期経営計画、単年度計画などすべての経営計画策定の基礎
    となるものです。

    そして、理念実践のためにどのような考え方で事業に臨むのかを示したのが
    「経営方針」であり、より業務に近いレベルでの社員の行動を規定するのが「行
    動指針」ということになります。

     ・経営理念(会社のあり方):自分たちの会社はどのような存在であるべきか

     ・経営方針(事業のあり方):理念実現のためにどのように事業を行うか

     ・行動指針(行動のあり方):理念実現のためにどのように行動するか

    これらについて会社によっては「経営理念はあるが、経営方針や行動指針にあ
    たる部分が不明確」ということもあると思います。

    経営計画発表会を機にぜひ策定しましょう。

    また、日頃から経営理念の唱和などはしていても、そこに込められた思いなどに
    ついて十分に理解できていない社員もいるでしょう。

    経営計画発表会のなかで社長自身の言葉で改めて解説します。

    経営理念が今回発表する各種経営計画のなかでどのように反映されているか
    についての発表も必要です。

    さらに理念実現のために社長自身が日頃からどのように考えてどのように行動
    しているかについても説明しましょう。

    6の「前期総括と経営計画発表会」
    前期の業績や社内の状況などを総括し、「会社全体が今どうなっているのか」と
    いう振り返りとともに、「会社はどこへ向かおうとしているのか」という経営計画に
    ついて発表します。

    特に次の点については詳細な説明が必要です。

     ①前期の経営計画と実績対比
       目標未達事項についてはその要因分析も必要。
       売上利益等の計数面だけではなく、方針面の計画実績対比も行う

     ②前期の経営計画にはなかったことについての成果と反省
       期中で発生した計画外の事項についての振り返り

     ③現状および今後の自社の経営環境
       世の中全体の景気・経済、市場動向、顧客動向、競合動向、技術動向など。

       客観的視点だけではなく、それを社長がどう感じているかという視点も必要  
       (何をチャンスととらえ、何を危機ととらえているのか)

     ④長期ビジョン

       「将来的には会社をこのようにしたい」、「社員にはこのような生活をさせて
       あげたい」といった社長の強い意志を示すことが大切。

       また、ビジョン実現までの数年ごとのステップを設定するなど実現までの道
       筋を示して社員に可能性を実感させることも重要

     ⑤中期経営計画

       今後3年間程度を対象期間として長期ビジョン実現のために何をどのように
       やっていくかという明確な方針を説明する。

       営業力、商品力、組織力などの分野ごとに分けて説明すると分かりやすい。

       自社のどのような強みをどこまで伸ばすかという戦略を示すことが重要

     ⑥今期事業計画

       長期ビジョン、中期経営計画を踏まえた今期の事業計画について会社全
       体、部門ごとに詳細に説明する。

       社員が数値目標を「ノルマ」ではなく、長期ビジョン実現のための第一歩とし
       て前向きに捉えられるような動機づけが重要

       なお、発表内容は社員が十分に理解できるように、丁寧に表現することが
       基本になります。

       社長が日頃から経営幹部陣と議論するうえでは「当たり前」になっている前
       提条件についても、発表会当日に初めて経営計画を目にする社員の多くは
       それを知りません。

      たとえば、新規事業進出の計画があるのならば、「どのような新規事業に進 
      出するのか」ではなく、「なぜ  新規事業進出が必要なのか」から説明しなけ
      ればなりません。

      11の「社長による総括」
      各部門長からの部門発表を受け、社長が発表会全体を総括します。

      部門長や社員たちへの期待、発表会で感じた社長自身の新たな決意を表明
      します。

   3.各部門長による発表のポイント

     各部門長は自部門のメンバーに対してだけではなく、出席している全社員に
     対しての発表を心掛ける必要があります。

     自分の発表を他部門のメンバーにも理解してもらい、全社的な一体感の醸成
     や全社経営計画推進につなげることが大切だからです。

     具体的には次のような点がポイントになるでしょう。

      ・自部門の業務内容、全社経営計画のなかでの役割などを示す

      ・前期の振り返り、反省点を明確にする

      ・明確で分かりやすい方針や数値目標を示す

      ・これだけは絶対にやり抜くという必達事項を表明する

      ・他部門への感謝の気持ちを示す

      ・発表時間を厳守する(他部門の発表時間を奪わない)

   経営方針(計画)書作成手順と経営方針(計画)書発表会詳細

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