社長のマイカー通勤
 

  ■社長のマイカー通勤はリスク

  □社長の行動も経営リスクの要因

   会社経営を取り巻くリスクは次のようにさまざまです。

    外部環境:法改正による規制強化、法令違反、取引先の倒産、天災など
    内部環境:従業員の大量離職、技術の流出、製品の瑕疵など

   会社は、事前にリスクが顕在化する可能性と、リスクが顕在化した場合の被害の大きさ
   を検討しながら、その対策を講じています。

   会社を代表する社長の言動そのものがリスク要因であることも忘れてはなりません。

   例えば、公式の場での社長の発言・態度が適切でなければ、企業の評価が低下して
   顧客離れを引き起こすなど、社会的制裁を受けることもあります。

   また、社長が事故に遭ったり、病気になれば、一定期間、経営の現場から離脱せざる
   を得ないこともあります。

   指揮官を失った会社は意思決定に支障を来し、活動が停滞する恐れがあります。

   社長はこうした点を十分に意識し、日ごろから注意しなければなりません。

   それは「通勤」も例外ではありません。

   例えば、社長自らが自動車を運転して通勤する途中に交通事故に遭った場合、状況
   によって社長は刑事上、民法上の責任を問われることもあります。

  □社長が交通事故に遭った場合の問題

   近年、交通事故件数は減少傾向にありますが、いまだ年間60万件前後の交通事故
   が発生しています。

   社長がマイカーを運転して通勤しているときに、何らかの形で交通事故に関与する
   ことになっても、何ら不思議ではない状況です。

  □社長が重大な交通事故の加害者になってしまった場合

   社長が交通事故の加害者になった場合を想定し、その影響を考えてみましょう。

   社長が交通事故の加害者となった場合、事故の大小に関わらず、その事実が明るみ
   になった時点で会社のイメージ低下を招きます。

   また、それが死者や重傷者が出てしまうような重大な交通事故であった場合、刑事上、
   民事上の責任を問われることになります(このほかに行政上の責任)。

   近年は2014年5月に自動車運転死傷行為処罰法が施行されるなど、社会の交通
   事故に対する目は特に厳しくなっています。

   その内容は被害の大小などによって異なりますが、ここでは、社長自らが自動車を
   運転して通勤する途中に、不注意で歩行者をはね、死亡させてしまったケースを考え
   ます。(ここで紹介する内容は一般的に想定される可能性の一部を紹介したもので、
   個々のケースによって状況が大きく異なります。詳細は、弁護士などの専門家にご
   確認ください。)

   1.刑事上の責任

     交通事故で他人を死亡させてしまった場合、運転者は過失運転致死罪に問わ
     れる可能性があります。

     これが確定すると、7年以下の懲役・禁固または100万円以下の罰金が科さ
     れます。

     また、制限速度を超過するなどしてことさら赤信号を無視する、アルコール・薬
     物の影響で正常な運転に支障が生じる恐れがあるなど、運転様態が特に死
     傷の危険を有する状態の交通事故で他人を死亡させてしまった場合、危険運
     転致死罪に問われる可能性があります。

     これが確定すると、1カ月以上15年以下または1年以上20年以下(注)の有
     期懲役が科されます。

   2.民事上の責任

     民事上の責任は、交通事故の被害者や遺族に対する損害賠償です。

     交通事故の状況や被告の大小によって損害賠償の内容は変わってきます 
     が、被害者が死亡してしまった場合は、より高額なものになります。

     通常、賠償金は損害保険を利用して支払いますが、任意保険の補償金額で
     足りなければ社長自身が負担することになりますし、会社が「社長のマイカー
     通勤を認めているような場合」などは、会社にも責任が及ぶ可能性もありま
     す。

   3.会社の信用度の低下

     重大な交通事故を起こした社長は社会から強く非難され、通常、社長の立場
     を維持することば難しくなります。

     会社は後継者を決めなければなりませんが、交通事故は突然起こるものであ
     り、ほとんど準備をしていない状況での対応を迫られます。

     社長の交代時は、一時的とはいえ上層部の意思決定が遅れ、資金調達など
     会社の重要な機能が滞る恐れがあります。

     また、特に事故対応の初動において、内外への対応を間違えると、失った信
     用を二度と取り戻せなくなってしまうこともあります。

  □社長が重大な交通事故の被害者になってしまった場合

   社長が交通事故の被害者になった場合を想定し、その影響を考えてみましょう。

   社長が交通事故の被害者となった場合に最も問題となるのは、社長が死傷して執務
   を執行できなくなるケースです。

   無傷もしくはごく軽傷であれば幸いですが、入院や自宅療養を余儀なくされる場合、
   一定期間、会社は社長不在の状況で経営していかなければなりません。

   けがの程度によっては、病院や自宅から社長が指示を出すこともできるかもしれませ
   んが、現場から離れたところでは“勘働き”が鈍り、通常では考えられないミスが生じる
   恐れもあります。

   また、運悪く社長が死亡してしまった場合の影響はより大きくなります。

   前述した通り、交通事故は突然起こるものであり、ほとんど準備をしていない状況で
   後継者を選ばなければならないからです。

   参考に警察庁「交通事故発生状況」より、座席位置別の交通事故による死傷者数
   (2013年)を紹介します。

   交通事故全体をみると、座席位置による致死率に大きな差はありませんが、シート
   ベルト非着用の場合には、運転席の致死率が交通事故全体で9.09%、高速道路での
   交通事故では15.71%と、他の座席位置に比べて高くなります。

   このように、一定の条件下では運転席の致死率が他の席に比べて高くなる傾向が
   あり、社長が自ら運転することで、交通事故に遭った際の死亡リスクが高まるという
   結果が出ています。

  □自社が講じるリスク低減策

   1.専任の運転者を持つ

     社長自らが自動車を運転して通勤する途中に交通事故に遭った場合の問題
     について考えてきました。

     社長が交通事故に遭うことが会社経営に与える影響は大きなものであり、事
     前に交通事故のリスクを低減するための措置を講じておく必要があります。

     その代表的なものとなるのが、専任の運転者を持つことです。

     交通事故の加害者となってしまった場合の責任は、原則として運転者が負うこ
     ととなります。

     専任の運転者を雇用すれば、社長自身が運転するときに比べて社長が刑事
     上の責任を問われにくくなるでしょう。

     実際、大企業の多くは専任運転者を雇用しており、社長が自ら運転する機会
     を少なくしています。

     社長が自動車を運転するということが企業にとって重大なリスクであると認識 
     されているためでしょう。

     また、専任の運転者を持つことの副次的な効果として、社長の疲労軽減が期
     待できます。

     通いなれた経路とはいえ、自動車を運転するのは疲れるものです。

     運転を専任の運転者に任せておけば、移動中、社長は疲労を回復することが
     できますし、書類に目を適すなどの仕事をすることもできます。

   2.自家用自動車管理業を利用することのメリット

     専任の運転者を確保する方法は、自社で雇用する方法と外部業者に委託す
     る方法に分かれます。

     いずれを選択するかば会社の考え方で変わってきますが、運転技術の高さや  
     車両管理の豊富な知識などを有する外部業者に委託したほうが、自社の負担
     が軽減されることがあります。

     会社の社用車などの運転を受託する業者は、「自家用自動車管理業」と呼ば
     れます。

     自家用自動車管理業者は、運転・整備・事故対応など、社用車の管理に関す
     る業務を一括して受託しています。

     自家用自動車管理業の業界団体である日本自動車運行管理協会 

   3.リスクを完全に回避することはできない

     自社が専任の運転者を持つことで、社長自ら自動車を運転して交通事故に
     遭った際の問題をある程度は回避することができます。

     会社が社用車を持ち、自家用自動車管理業者と契約するにはコスト(個々に
     異なりますが、社用車1台で年間500万〜700万円程度のようです)がかかり
     ますが、社長が交通事故の加害者になったときの問題を考えれば、一度、検
     討してみるのもよいかもしれません。

     ただし、自家用自動車管理業者を利用するとはいえ、社長が同乗している自
     動車が事故の加害者となれば、社長が全く無関係というわけにはいかず、社
     会的制裁を免れないでしょう。

     また、いわゆる「使用者責任」などを問われることもあり得ることを忘れてはな
     りません。 

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