ハインリッヒの法則
 

  ■ハインリッヒの法則

   29件の軽災害の先に重大事故がある。

   ハインリッヒの法則と言うともう聞き飽きた感があるが、ハーバート・ウィリアム・ハ
   インリッヒが論文で発表した 1:29:300 の法則である。

   当時、彼は米国の損害保険会社に勤めており、労働災害の発生について、1件の
   重大災害の背後には29件の軽災害、300件のヒヤリ・ハットがあるということを述べた
   ものです。

   ほとんどの場合何事もないから、危険をはらんだ決定をしてしまう。

   すなわち、事象がいったん進行し始めると、それが事故となるか、何事もなく過ぎるか
   は確率の問題です。

   そして、ほとんどの場合何事もなく過ぎるから、私達はつい危険をはらんだ決定を良し
   としてしまいます。

   問題は、この1つの重大災害がどの程度のものであるかだ。

   近年、世間を震撼させた事故として、六本木ヒルズの回転ドア事故(2004年)、JR
   西日本の福知山線脱線事故(2005年)などがあった。

   これらの事故では、亡くなった人々が最大の被害者であるが、事故を起こした加害者
   は二度と同じような事件を起こさないよう、世間に提供しているサービスの形態や、
   組織の中の仕組みを変えなければならない。

   六本木ヒルズからは大型自動回転ドアが姿を消し、JR西日本ではATS、ATCといっ
   た自動制動装置を増やしているようだが、運転手の注意に頼らざるを得ないところは
   否めない。

   運転速度を、安全速度と合わせて客室に常時表示するなど、もっと根本的な解決が
   望まれます。

   これらの大事件の規模まで至らなくても、怪我をして病院に運ばれたりすると、軽症
   (軽災害)ではなく、ハインリッヒの重大災害に数えられる。

   経営者はそのような事故が起こらないように、常に現場の危険箇所を根絶する努力を
   しているのだが、普通の目で観察していてもその危険箇所がどこに潜んでいるのかが
   分かりにくい。

   ハインリッヒの法則は、ヒヤリ、ハットとするようなことがあれば、それを「何事もな
   くてよかった」とやり過ごすのではなく、せっかく危険箇所が露呈したのだから、それを
   なくす対策を講ずれば重大災害を防ぐこともできると示唆してくれている。

  □失敗を「隠さないことがいいこと」という文化を醸成
   ひと昔前の日本では、よく職場や学校などで人が人をどやしつける場面を見たもの
   だった。

   会社では上司が部下を大声で叱責したり、先生が生徒を怒鳴りつけたりしたものです。

   それは良からぬいたずらや、とんでもない失策を犯したものに対する腹立ちもあっ
   たのだろうが、それよりも叱りつけることで、本人の注意を喚起して同じ間違いを繰り
   返さないようにしてほしいという教育効果を期待してのことでしょう。

   しかし、昨今の人権に対する認識の向上や、怒鳴られることによる精神的苦痛がその
   人の人格に与える影響が取り沙汰され、そのような場面はもっぱらテレビドラマの中に
   限るという風潮になってきています。

   また、いたずらに対する叱責は効果があるが、仕事上の失敗についてはどうだろうか。

   もちろん、失敗を起こした当事者がそれを問題と認識していなければ、それが問題
   であることを知らしめる効果はあります。 

   しかし、本人も自分が失敗をしたことを認識していれば、それを必要以上に叱責する
   ことはかえってネガティブな気持ちを生み、仕事に対する意欲が失せたり、それ以降の
   失敗を隠そうとする動機を生んだりする。

   特に日本の場合は、仕事をしている自分、それと人間としての自分の区別があまり
   なく、仕事で失敗をすると人間失格のような意識ができて、通勤や家庭生活までもが
   辛くなってしまう。

   失敗を隠匿しようとするのは、人間が自分を守ろうとする自然な心理の表れである
   ことを、上の立場から管理をするものは認識しなければなりません。

   だから、組織は常日ごろから「隠さないことがいい」という文化を醸成しなければなら
   ないのです。

   米国では、仕事をしている自分と人間としての自分が比較的うまく分離している。

   すなわち仕事で失敗をしても、それは設計技師や営業部長としての失敗であって、
   人間としての自分とは関係ないという意識が強い。

   そのため、設計の失敗は十分な訓練や設計審査を行わなかった組織の問題であり、
   営業の失敗は営業活動に必要なリソースを組織が与えなかったからと考える。

   当人だけではなく、周りもそういう意識を持つから仕事のストレスが比較的少ない文化
   である。

  □「ヒヤリ・ハット」は企業の問題点を発見する絶好の機会
   先に紹介したハインリッヒの法則をうまく利用して失敗を自ら申告する風土を作り出し
   ている会社もあります。

   一般的に、失敗を報告するのでは、自らの報告が自分の立場を悪くするのでどうして
   も情報が十分に引き出せない。

   そのため、ある会社ではヒヤリ・ハット(ヒヤリとした、ハッとした事例)を発表する
   定例会を設けている。

   ヒヤリ・ハットなのだから、失敗をする前であり、つまり自分の責任を問われることは
   なく、逆に組織の問題点が失敗に発展する前に指摘し、修正する機会を作ったのだか
   らむしろよくやったとほめられることになるのです。

   これを実践している会社では、それまで何気なく過ごしていたのが、この発表会のため
   に、みんなが組織の中の問題点や事故になりそうなところを探すようになったという。

   次々と自分たちのよくない部分が露呈し、それを正すことで労働災害がどんどん減っ
   ていった。

   さらに、従業員たちの失敗に対する意識も変わり、今ではこのヒヤリ・ハット報告会を
   利用して実際にやってしまった失敗を自ら発表する人も出てきた、とのことだ。

   最近では、このヒヤリ・ハット報告会を実践している会社が増えてきたようだ。

   しかし、これも形式的にやっていたのでは時間の無駄となるでしょう。

   組織の責任者が自分たちの問題を見つけ出し、それを潰す絶好の機会と考えること
   で、組織はまた一つ進化することができるのです。

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