天候デリバティブ


  ■『デリバティブ』とは

   あなたも聞いたことのある言葉だと思いますが、きちんと理解している人が少ない
   のも事実です。

   ここで『天候デリバティブ』について考えてみましょう。

   日本語では『金融派生商品』と訳されます。

  □天候デリバティブ
   企業経営において、天気は自分の力ではどうしようもないリスク・ファクターです。

   天気しだいで思わぬ利益が上がる場合もある半面、手痛い損害を受けることも
   あるため、天気の変化が生み出すリスクは企業経営者にとって、無視できない。

   そうした天候リスクを回避するための手法が「天候デリバティブ」と呼ばれる、一種
   の金融商品です。

   仕組みとしては損害保険に似ているが、前もって料金(保険料)を払っておくと、
   気温や雨量などが一定の条件を満たした場合に、払った料金の何倍かの補償金
   (保険金)を受け取ることができるというものです。

   損害保険と違うのは、契約者が損害を受けたかどうかに関係なく、天候という外
   的な条件が満たされればお金が支払われるという点。

   そのため、煩雑な手続きが要らず、利用しやすいというメリットがある。
 
   この仕組みは、米国の総合エネルギー会社エンロンが開発し、97年に最初の取引
   を成立させたといわれるが、日本でも損害保険会社と銀行が組んで提供し始め、
   既に食品・飲料メーカー、電機メーカー、アパレル、外食産業、レジャー産業旅行
   会社、電力・ガス、イベント、建設、デパート・小売りなど、さまざまな業種の企業
   で利用されています。

   中堅・中小企業では、企業収益の大部分を一部商品に依存している場合が多く、
   それが天候により大きく影響を受けるものであれば、ニーズは高くなっており、金融
   機関は天候デリバティブの販売を強化しています。

   小口の定型商品の開発や信託を活用した天候デリバティブの開始など、商品の多
   様化も進んでおり、今後契約する企業数や業種も広がるとみられる。

   天候デリバティブの仕組みでは、前提となる天候条件と保険料、保険金の関係を
   どう設定するかがポイントになる。

   そこで用いられるのが、金融工学の考え方と手法です。

   天候デリバティブという言葉には、金融工学の手法を使って天候リスクを売買する
   商品という意味が込められています。

   金融ビジネスでは、資金のやり取りの仲介以上に、さまざまなリスクをいかに管
   理するかという機能が重要視されている。

   中心となるのは、個々の企業の事業活動にともなうリスクだが、それと並んで、金利
   や為替レートといった人為的に動かしようのない環境変化のリスクをどう管理する
   かも重要な課題となっているのです。

   企業にとっては、金融市場で決まる金利や為替レートも、自分の力では動かしよ
   うがないという意味では、天気と同じようなものです。

   そもそも、金利や為替の変動にともなうリスクを回避(「リスクヘッジ」)する手段と
   して生まれたデリバティブも、その原点を探っていくと、主として天候リスクに対処
   するための農産物の先物取引に行き着きます。

  □天候デリバティブの特徴
   天候デリバティブは金融取引の一種ですが、通常のデリバティブとは次の点が異
   なります。

   ○通常のデリバティブ(金融派生商品)
    ・目的=当初は為替などの価格変動リスクの回避

   ○現在では投機目的で利用されることも多い
    ・指標=金融指標(金利、為替、株価など)

   ○天候デリバティブ
    ・目的=異常気象、天候不順など想定外の天候によって企業が被る損失を
         回避すること(投機目的で利用することはできない)

    ・指標=気象データ(気温、降雨量、日照時間、積雪量、風速など)
     (例)8月の31日間に東京の気温が1日平均で××度を上回る日数が
        △△日を超えた場合、契約した金融機関が○○○万円を支払う

   天候変動が契約で定めた条件を満たせば、実損に関係なく補償額が支払われ
   ます。

   天候デリバティブはオプション料・補償額とも事前に確定しているので、予想外の
   損失が発生することはないが、金融取引であることは事実である。
 
  □天候デリバティブのメリットとデメリット
   ○メリット
    (1)予期せぬ天候変化による損失を軽減し、収益を安定化させる
    (2)実損の有無にかかわらず、補償額が支払われる
    (3)企業の要望に則して、オーダーメードの柔軟な商品設計ができる
    (4)付随的効果として、自社のリスクマネジメントの姿勢を株主・投資家など
       対外的にアピールできる

   ○デメリット
    (1)契約時にオプション料を支払う必要がある。
    (2)実損の有無にかかわらず補償するため、保険に比べ相対的にヘッジコ
      スト(リスクを回避するためのコスト)が高くなる可能性がある。

      従って、指標が契約で定めた条件を満たさなければ、保険料は掛け捨て
      になる。
    (3)補償金の支払いに限度があるため、極端な異常気象の場合十分な補償
      が得られないケースがありうる。

  □天候デリバティブの手法
   例えば、土日・祝日に集客力のある遊園地にとって「雨の日」は大きく売り上げが
   減少するため、雨の日が続く場合の売り上げ減少リスクを回避したいと考えると
   します。

    (1)観測期間(3カ月後から8カ月間の土日・祝日のみ)
    (2)観測所(札幌)
    (3)支払条件(観測期間中に降水日が30日以上あった場合)
    (4)30日を超えた1日当たり200万円
    (5)最大支払額(3000万円)
    (6)オプション料(200万円)

   この場合、観測期間中の降水日が36日になったと仮定すると、遊園地側の受取
   金は、200万円×(36日−30日)=1200万円

   となり、オプション料を引くと、損益は1200万円−200万円=1000万円となる。
  
  □契約に際しての留意点
   (1)天候デリバティブ契約の検討に際しては、取引の妥当性・必要性・リスクお 
     よび効果を十分に理解のうえ、判断しなければならない。

   (2)天候デリバティブ取引は保険契約ではないため、保険契約者保護機構の
     補償対象ではない。

   (3)受け取る金額は、実際に生じた収益減少額によらず、支払要件となる気象
     観測の結果に基づいて決定されるため、実際に生じた収益減少額に比べ
     て少ない場合がある。

   (4)会計上および税務上の取り扱いについては、会計士・税理士に確認するこ
     とが必要。

  □天候デリバティブの活用事例
   ある老舗うなぎ専門店では、土用の丑(うし)を中心とする夏場の需要に期待する
   が、梅雨明けが遅れ冷夏が続いた場合の客足低迷が心配だった。

   そこで猛暑の日数が少なかった場合に補償を受ける天候デリバティブ契約を
   結びました。
 
   契約は7月26日から8月31日までの37日間。

   最高気温が33度以上となる日が6日間を下回った場合、下回った日数につい
   て一日あたり36万円を受け取る。

   この老舗うなぎ専門店では保険会社に50万円の契約料(オプション料)を支払
   う。
 
   この老舗うなぎ専門店は過去3年間の売上高と天候の関係を調査。

   その結果「降雨の影響は小さいものの、日中の気温次第で売り上げが2〜3割
   も変動する」という"法則"に着目した。

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