ベンチマーキング

ベンチマーキング
 

  ■ベンチマーキングとは 

   自社の経営力向上のために、日頃から「他企業のよい点は積極的に取り入れたい」と
   考えている社長は多いでしょう。

   すでに成功している企業の経営手法を参考にすれば、自社でゼロから考えるよりもスピ
   ーディーに成果につなげることも可能です。

   しかし、「もっと上手な商売や仕事のやり方はないかな」と漫然と探しているだけでは、
   自社に役立つ成功事例に出会う確率は低いでしょう。

   より効果的に成功企業の経営手法を取り入れるための、ベンチマーキングの手法に
   ついて考えてみましょう。

   近年ベンチマーキングが注目されているのには理由があります。

   多くの中小企業では、今もって従来型の目標設定である「対前年比10%の生産性の
   向上を図る」といった、過去の延長線上に目標が設定されます。

   しかし今まで通りのやり方で目標を設定していたのでは、経営の革新はできません。

   今後、他社よりも優れた経営を行うため、迅速に経営に結びつけるスピードが大切に
   なります。

   良い知恵をどんどん学んでそれを取り入れるベンチマーキングの手法が経営革新の
   近道になるとして注目されているのです。

   自社の課題解決のために、競合他社、異業種企業の優れた経営手法(「ベストプラクテ
   ィス」)を持つ企業を見つけだし、自社をその企業に近づけさせる手法のことをいい
   ます。

   簡単にいえば、成功企業の優れている部分を自社流にアレンジして取り込むという
   ことです。

   ベンチマーキングとは、視察による表面的な「観察」に留まらず、なぜそれらができて
   いるのかという、理由やプロセスも含めて分析・研究しようというものです。

   また、ベンチマーキングは自社ですでに行っている事業の参考にするだけではなく、
   新規事業を行う際の重要な情報とすることができます。

  □ベンチマーキングの方法とプロセス

   ベンチマーキングのプロセスは、「ベストプラクティス」を発見し、取り入れ、そのベンチマ 
   ーク(指標)を計測し、目標値を設定し、そして目標に達するよう実行します。

   これを継続的に実施することにより、具体的なシステム改善の状況、効果を把握します。

   一般的なベンチマーキングのプロセスをまとめると、次のようになります。

   ここでは、ベンチマーキングの基本的導入方法・事例として、「業務改善」を
   テーマに進めていきます。

    1.適用範囲の選定

     まず、どの業務にベンチマーキングを適用するかを検討します。

     例えば「工場から小売店店頭までの物流の見直し」「検品作業の効率化」「残業を
     減らすための手法」「アウトソーシングによるコスト削減
     「営業方法のマニュアル化」「発注方法の短縮化」など、ありとあらゆる企業活動が
     その対象となります。

     まずは自社が他社よりも劣っているのではないかと思われる業務をいくつか選び、
     その中から特に早急に改善すべき項目を絞り込んでいくのが取り組みやすいでし
     ょう。

     できることから着手し、ノウハウを身につけた後で高度なベンチマーキングにチャ
     レンジするようにします。

     改善する業務が決定したら、ベンチマーキングにより問題点を明確化します。

     この段階では、公表資料を中心に他社と自社との比較検討を行います。

     新聞、雑誌の記事、インターネット、あるいは官庁や業界団体の各種統計資料、
     調査報告書など、比較的簡単に手に入る情報を入手します。

     自社のデータについては、把握できるものは数値化し、「なぜ改善が必要なのか」
     「最終的に何を目指すのか」など、自社の課題と目標をある程度整理しておき
     ます。

    2.ベンチマーキング対象企業の選定

     調査した各種データをもとに、すでに成功していると思われる企業の経営手法を選
     定します。

     対象相手は1社である必要はなく、複数の企業からそれぞれの優れているところ
     を比較対象とすることもできます。

     この対象相手の選び方によって目指すべき目標が定まりますので、非常に重要な
     作業となります。

     対象相手の選び方はベンチマーキングしたい業務によって異なりますが、選び方
     をまとめると次のように分類できます。

      (1)社内をベンチマーク

        社内のほかの事業部や関連会社などを比較対象とする方法です。

      (2)競合企業をベンチマーク

        同業他社を比較対象とするベンチマーキングでは、当然業界トップ企業が対
        象となります。
        同業他社という点で直接交渉して情報を得ることは難しいかもしれませんが、
        その分さまざまな媒体において成功の秘訣や業務構造が紹介されているこ
        とがあるので、概要をつかむことはできるはずです。

      (3)業務部門をベンチマーク

        他業種の同一部門を比較対象とするベンチマーキングです。

        直接事業に関わる部門では比較しにくいのですが、総務、人事、広報など、
        間接部門においては共通した部分が多いはずです。

        他業種のため、比較的容易に情報
        を公開してもらえます。

  □「学び」に対する意識改革

   環境の変化が読みにくく、かつ変化のスピー
   ドが加速する今日においては、学びのスピー
   ドが会社の命運を左右するといっても過言で
   はありません。

   ベンチマーキングは自社の経営課題解決の
   ための最適な解答を、すでに成功している会
   社の事例から学ぶことであり、よりスピーディ
   ーな学習効果が期待できます。

   社長は従業員に対して「ベンチマーキングは
   成長の早道である」ことを説明し、従業員が
   それぞれの立場からベンチマーキングに
   積極的に参加するように意識づけを行う必要があります。

   社長自身がベンチマーキングから学んだことを従業員に
   詳細に説明することなども有効です。

  SPDLIサイクル設計と実践

   ベンチマーキングは通常のPDCAサイクルを応用した、SPDLIサイクルに沿って
   進めていくのが一般的です。

   PDCAサイクルはすでに決まったことをいかにきちんと行っていくかに力点がおかれて
   いますが、SPDLIサイクルでは、「何を学び、何を革新すべきか」という戦略段階
   から始める。

   また、成功例から徹底的に学ぶというフェーズ(側面)が入っていることも特徴で
   す。

    1.戦略策定(Strategy)

      戦略とは自社のめざすべき姿に近づくためのシナリオのことです。

      多くの企業ではすでに中期経営計画などで戦略を策定していると思います
      が、ベンチマーキングの本格導入を機に戦略を改めて確認してみましょう。

      自社が今後さらに強化していきたい「強み」や、成長の妨げになっている「弱
      み」を明らかにして、そのために自社が何を学ぶべきかを抽出します。

      ここからは「顧客満足度向上」を戦略テーマの例として以下のフェーズを説明
      します。

    2.計画(Plan)

      実際にどのようにべンチマーキングを行うか明らかにします。

      ベンチマーク先の候補企業(組織)の選定、ベンチマーキングのためのプロ
      ジェクトチームの組成、役割分担、スケジューリングなどを行います。

      プロジェクトチームのリーダーは当該戦略テーマについての責任を担ってい
      る役員クラスを任命し、その下に各部門のリーダークラスを配置します。

      ここでは、ベンチマーク対象に応じた自社の業務プロセスを分解・分析するこ
      とが特に重要になります。

       ◎戦略テーマが「顧客満足度向上」の場合の例

        自社ではどの部署がどのような活動を行っているか、顧客評価をどのよう
        に吸い上げているか、実際の満足度評価の結果、リピート率、クレーム率
        などについて明らかにします。

        これにより次のフェーズの「情報収集」でベンチマーキング企業との詳細
        な比較が可能になります。

        次のようなベンチマーキング設計シートをあらかじめ準備しておきます。
 
    3.情報収集(Do)

      計画にしたがってベンチマーキング候補企業の情報を収集します。

      情報収集には新聞、経済誌、業界専門誌、業界団体が公開している統計資
      料、インターネットの専門サイト・企業サイト、テレビのビジネス番組などや、 
      上場企業の場合は有価証券報告書などが活用できます。

      また、商工会やコンサルティング会社が行っている「成功事例セミナー」、「視
      察ツアー」などからも有益な情報が得られるでしょう。

      さらに先方企業から直接ヒアリングする方法もあります。

      競合企業からのヒアリングは困難かもしれませんが、機能ベンチマーキング
      先の非競合企業からの協力は意外と得やすいものです。

      「学びたい」という姿勢を前面に出して、疑問点を聞いてみましょう。

      なお、その際に相手から求められた場合は自社の情報も公開することが必
      要です。

       ◎戦略テーマが「顧客満足度向上」の場合の例

        前述のベンチマーキングシートを使って、自社の業務プロセスや満足度
        評価などの各種指標と、ベンチマーキング先のそれを比較できるようにヒ
        アリングします。

    4.学習・分析(Learning)

      複数のベンチマーキング候補企業から情報が収集できたら、そのなかから
      特に優れており、かつ自社でも対応可能と思われる手法を抽出します。

      そして、自社の業務プロセスと比較してそのギャップを明らかにし、ギャップ

      を埋めるためには何をすればよいかを分析します。

      分析結果はシートにまとめ、プロジェクトメンバー全員が認識を共有します。

      そしてすべてのベンチマーキング項目について、「誰が、いつまでに、どの水
      準を達成するか」という具体的な実行計画を策定します。

      計画は実際に活動に取り組む現場の理解を十分に得ながら進める必要が
      あります。

      また、達成状況を正確に把握するために、目標はできるだけ数値化します。

       ◎戦略テーマが「顧客満足度向上」の場合の例

        たとえば、ベンチマーキング先企業が10名の顧客対応専任者をおいてい
        る場合などは、自社でそれをすぐに実現することは難しいかもしれない。

        その場合は、ベンチマーキング先企業と自社の企業規模や顧客数の違
        いなどから、自社が当面めざすべき体制を考えます。

    5.革新(Innovation)

      「学習」の結果を踏まえた計画を実行します。

      それぞれの活動についてプロジェクトリーダーはつねに進捗状況を確認し、
      必要に応じて問題点の改善や計画の見直しを行います。

      そして、すべてのベンチマーキング項目が達成された場合に、それが十分な
      経営革新につながっているかどうかを評価します。

      不十分な場合はベンチマーキングの項目と達成水準を見直して、SPDLIサ
      イクルの「計画(Plan)」の段階に戻ります。

      このサイクルを粘り強く回し続けることがより高いレベルでの戦略実現につな
      がります。

  □留意点

   1.本質をしっかりと学ぶ

     ベンチマーキングは、たんなる「ものまね」ではありません。

     優れた会社の手法を学ぶためには手法そのものだけではなく、「なぜその手法が
     採用できているのか」という点にまで踏み込んで考える必要があります。

     ここで取り上げた「顧客満足度」についても、なぜベンチマーキング先企業は
     高い顧客満足を提供できているのかについて、その本質を学ぶことが大切で
     す。

     ベンチマーク項目を検討する際にはその点を十分に留意する必要がある。

     また、ベンチマーク先企業は長年の取り組みの結果、成功手法を身につけて
     います。

     自社がそのレベルに短期間で追いつくのには、相応の努力を覚悟しなければ
     なりません。

   2.ヒントはどこにでもある

     ベンチマーキングを進めるうちに、「あの会社(業界)だからできることであって、
     うちではできない」、「うちの会社は事情が特殊だから」と早々に諦めてしまうケー
     スもあります。

     しかし、ベンチマーキングとはそもそも、自社内のこれまでのやり方だけでは解決
     が困難なことを、他社の知恵を借りて実現することです。

     最初はベンチマーキング先の施策が特別にみえて当然なのです。

     しかし、ライバル企業がまだ気づいていない「お宝」が得られる可能性もあります。

     自社の常識や発想とはかけ離れたところに、問題解決のヒントが眠っていること
     も多いことを忘れないでください。

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