だいじょうぶ? 取引先の経営状況(与信管理)
 

  ■与信管理

   会社にとって、取引先の与信管理は非常に重要な業務です。

   特に中小企業にとって取引先の倒産は自社の死活問題となります。

   取引先の信用度をチェックする方法としては、決算書や調査会社の信用調査レポー
   トなどから判断する方法が一般的です。

   最近では、IR情報を公表している企業が増えているため、一定規模以上の企業との
   取引を行う際には、企業のウェブサイト上のIR情報(決算、四半期報告、各種プレス
   リリース)などを確認し、企業の財務状況や経営動向を把握することも有益です。

   しかし、経営を取り巻く環境の変化が著しい現在においては、年に数回程度のこうした
   調査だけでは不安が残ります。
   
  □営業マンの情報収集能力

   これらの書類の定期的なチェックに加えて、営業マンなどが会社を訪問(出所:東京商
   工リサーチ)した際に、社長や従業員の行動、事務所の雰囲気などからその会社の
   危ない兆候を読みとることも大切な信用調査といえます。

   取引先の危ない兆候は、営業マンが一番キャッチする機会が多いのです。

   しかし、情報に興味がなく、観察力に劣っていたら情報はなかなかつかめません。

   「見逃すな」「見落とすな」「見過ごすな」の3Mを気にすることです。

   営業マンは注文をとって、売り上げを上げること
   だけに傾注すればよく、回収は経理がする仕事
   と割り切っている人がいます。

   しかし、営業の本来の仕事は、受注から納
   品、代金回収(手形決済まで)までです。

   自らの情報源と洞察力があれば、特別骨の
   折れる仕事ではありません。

   得意先に一番接する機会が多く、信用情報
   の収集が容易にできる立場にもあります。

   自らの情報源と洞察力があれば、特別骨の
   折れる仕事ではありません。

   会社が危ないときには、たとえ数値や評点におか
   しい点がなくとも、なんらかの兆候がみられるもの
   です。

   現場の担当者の感覚やほかの取引先から流れてくる噂は、ばかにはできません。

   営業日報にチェックシートを添付しておくことも必要です。

    ・いち早くおかしなところに気づく感覚を磨き

    ・「おかしい」と感じたらすぐに調査を開始し、
     正確な現状把握を行うような体制を整えて
     おくことが必要です。

   では、どのような企業が「おかしい」のでしょうか。

   次にチェックすべきおもなポイントをあげています。

   取引先を訪問する際には、このような兆候がないかどうかをつねに気にしておくことが
   肝心です。

  □取引先訪問時チェック

   ○社員の態度が悪い

    ・社員の表情が暗い

    ・電話の声に覇気がない

    ・伝言が伝わらなかったり、応対がだらだらしているなど、
     仕事に誠意が感じられない

    ・公然と自社や社長を非難する

   ○職場がなんとなく荒れている

    ・書類などが片づかず、雑然とした雰囲気がある

    ・事務所やトイレが清掃されていない

    ・空き机が多く、極端に片づいている

    ・壁の額縁が曲がっていたり、机などの配置が乱れたままになっている

    ・在庫が無造作に積まれ、整理されていない

   ○会社の雰囲気が急に変わった

    ・頻繁に人がいなくなる(退職や解雇など)

    ・知らない社員が増えた(出向受け入れなど)

    ・突然の人事異動が頻繁にある

    ・急激に職場の雰囲気が悪くなった

   ○社長や経営幹部・経理担当者の挙動が不審である

    ・未回収の売掛金が増えてきた

    ・自社に取引条件の変更を申し入れてきた

    ・経営や後継者問題に関する話題をもち
     出すと話をそらす

    ・風邪だ出張だと、急に不在がちになった

    ・社長の家庭に問題があるらしい

    ・役員の間でもめごとがある

    ・幹部社員が急に退職した

   ○ほかの取引先との関係がおかしい

    ・社員が電話で誰かともめていた

    ・出入りの業者や仕入先・納入先、取引金融
     機関などの顔ぶれが変わった

    ・評判の悪い企業と取引をしている

   業績の落ちてきた企業は、当然社員の士気も落ちてくるし、資金面が不安定になれば
   取引先とのトラブルも多くなります。

   営業担当者には、こうした情報を速やかに確実にキャッチできるように、普段から、
    ・取引先社員のなかに複数の「親しい関係者」をつくっておき、情報が得
     られるようにする

    ・同業者の間にもできるだけ多くの人脈をもち、いち早く「噂」が集まるように
     する

   といった努力や対策を講じることが求められます。

  □危険信号が発せられたら

   営業担当者から、「あの会社は何かおかしい」という危険信号が発せられたら、速やか
   に総務・経理担当者や営業部門の管理者が正確な状況を把握するための調査を開始
   して、必要に応じて経営者など経営幹部に報告しなければなりません。

   ●調査のための手順と方法

    1.聞き込み調査

      同業者・下請け企業・取引先・取引金融機関などから問題企業の信用状況につ
      いて「さりげなく」情報を集めます。

      その際、自らその企業に対する信用不安をまき散らし、経営を悪化させないよう
      配慮しましょう。

      会社の異常は社長を始めとする経営陣の行動変化に表れやすいものです。

      この点について営業担当者から指摘があった場合には、特に注意して確認する
      ようにします。

      <チェック>

       ○経営陣の状況はどうか

        ・社長や経営陣に関する悪い噂はないか

        ・トップ同士の面談申し込みに快く応じて
         くれるか

       ○取引先の状況はどうか

        ・取引額が一社だけ特別に大きいところはないか

        ・特定の企業の取引が急に増えていないか

        ・評判の悪い企業や業績の悪い企業と取引していないか

        ・主要取引先の倒産などはないか(=連鎖倒産の危険)

       ○どんな取引をしているか

        ・支払い延期の申し入れがある

        ・商品の納期遅れがある

        ・取引高が急に増えたり減ったりしている

        ・決済方法が急に変わった(手形ジャンプの依頼を受けた、
                         債権相殺の申し出があったなど)

        ・融通手形(融手)を扱っているらしい


    2.不動産登記簿を閲覧

       不動産登記簿は、各都道府県庁所在地の地方法務局・支局・出張所に備え付
      けられており、誰でも閲覧することができます。

      不動産登記簿は、企業の資産にどのような担保権が設定されているか、担保権
      設定状況がどのように変化しているかをみるうえで極めて有効な資料です。

      できれば営業担当者からの警報がなくてもすべての重要取引先については定期
      的に与信管理チェックシートなどでチェックするようにしておきます。

      <チェック>

       ○担保権が第何位まで設定されているか

        ・はじめに設定された担保権が抹消されず、
         次々と融資を受ける先が増えていないか

       ○資産を担保にいれてどのような取引を
        しているのか

        ・誰が担保権を設定しているか

        ・どのような債権によって担保権が設定
         されているか

        ・担保権の枠が拡大されていないか

        ・担保によって得られた資金は何に
         使われているか

       ○担保権設定時期は集中していないか

       ○本社や工場など主要な不動産を処分していないか

       ○担保権設定者に不審な金融機関はないか

     不動産登記簿に登記されているのがたとえ正規の金融機関の担保権であっても、
     ひとつの不動産に複数の担保権設定がある場合は、資金繰りが厳しくなっている
     可能性が高いということです。

    ○担保権の設定者によっては次のような危険な状況も疑われます。

     ・聞き慣れない金融会社名が掲載されている場合

      ⇒取引金融機関から受けられる融資だけでは資金が足りなくなっている

     ・取引先企業が担保権を設定している場合

      ⇒売り掛け債権が回収できないかもしれないと判断して非常措置をとった企業
       がある

  3.決算書を入手

   非上場企業の場合は上場企業に比べて手に入りにくいですが、もし3年以上の期間
   について決算書が手に入れば、それを比較分析することで正確に取引先の経営状況
   が把握できます。

   特に注目すべき点は、以下の3点です。

    (1)収益構造悪化の兆候

      具体的に次のような行動をとる企業は「危ない」
      と考えられます。

       ・販売力を超える生産

       ・無理な販売のための過剰な値引き

       ・販売促進のための過大な費用負担

       ・販路拡大のための売上回収サイトの長期化

       ・貸し倒れなどのリスク管理不在

      <チェック>

       ・売上高が停滞または減少傾向にないか

       ・経常利益が急に減少していないか

       ・販売コスト、特に宣伝広告真の急増と金利の負担増が起こっていないか

       ・売上高の伸びを超えて未回収の債権が増えていないか

    (2)資金繰り悪化の兆候

      リスク管理や資金の安定確保よりも、まず必要な資金を調達することだけを考
      える企業は、次のような行動をとります。

       ・通常の金融機関以外からの借り入れ

       ・主要取引先に支払い条件の変更や手形ジャンプの依頼

       ・手元流動資産(現預金・有価証券)の取り崩し

      <チェック>

       ・借入金や金利負担が急に増えていないか

       ・受取手形の急減や割引手形の急増が起こっていないか

       ・手元流動資金が急に減っていないか

       ・支払い延期によって仕入債務か増えていないか

    (3)粉飾決算の兆候

      粉飾決算とは、人為的に決算書の数字を操作(粉飾)した決算のことです。

      実態よりも、見栄えを良くするために、「売上の水増し」や「利益の水増し(経費
      の過少計上)」などが行われます。

      取引先相手の粉飾決算を見抜くことは大変困難ですが、相手の信用状況が疑
      わしい場合、最低でも「架空売上はないか」、「資産額が異常に伸びすぎて
      いないか」といった点については確認しておきましょう。

      <チェック>

       ・決算書の主要数字の根拠について、先方社長が即答できるか

       ・その根拠に矛盾する点はないか(特定の売上に対する原価が計上されて
        いないなど)

  □取引先の経営悪化が確認されたら

   取引先の信用に不安を感じたり、さらに調査機関
   などを利用して経営の悪化が確認されたら、即座
   に対策を打つ必要があります。

   <チェック>

    ○取引方法を変える必要はないか

     できるだけ与信限度額を減らし、現金取引を
     増やしたり、それが不可能な場合には手形
     に変えてもらうようにして、極力売り掛けを減ら
     します。

    ○契約書などで債務・債権の所在を証明できるか

     日頃から取引の状況を確認できる書類(契約書、
     発注書、受領証、借用書など)に不備がないように
     しておくことが大切です。

     もしそのような書類を介さずに取引していたような場合には、先方の社長に「たし
     かに商品は受領しており未払いの売り掛けが残っている」という一筆をもらうこと
     も必要でしょう。

    ○債権取り立ての手段を確保しているか

     担保取得の可能性を検討したり、取引先社長の個人保証をとりつけておく必要が
     あるでしょう。

     ほかにも代物弁済や差し押さえ、仮処分などの回収方法を検討し、同時に積極的
     な督促を行います。

     場合によっては、先方の承諾をとって商品の引き揚げなども検討します。

     法的手段を行使するためには、信頼できる弁護士に早めに相談することが大切
     です。

    ○法的処置をとることはできるか

     危険度の高い相手に対しては、法的処置が必要になる可能性もあります。

     いざという時のために、あらかじめ弁護士と協議しておくとよいでしょう。

    ○リスクヘッジのための保険への加入(取引信用保険

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