中小企業にとってのバランススコアカード
 

  ■バランススコアカード(以下、BSC)とは

   バランススコアカードとは、会社のビジョンと戦略を4つの視点で展開していくことで、
   売上・利益などの表面上の財務数値だけではなく、人材面などの目に見えにくい部分も
   含めて計画を策定し進捗管理をしていくための手法です。

  □基本的な考え方

   BSCを一言で表現すると、目的・目標達成のための手段です。 

   バランススコアカードの考え方はシンプルです。

   BSCの「バランス」とは会社の戦略経営方針など現在の経営状況について、売上や
   利益などの最終的な業績の数字面だけではなく、人材や業務プロセスがどのように
   変化しているかなど、目に見えにくい部分も含めて会社全体をバランスよくみていく、
   という意味です。

   そして、「スコアカード」とはその状態(計画とその達成度合い)をできるだけグラフ等
   で数値化して目に見える形で明確にしていくということです。

  □経営課題を絞り込む

   最近ではBSCを活用した中期経営計画を策定する会社が増えています。

   従来型の中期経営計画は、ビジョン実現のために必要な戦略を列挙し、それを部門ごとに
   分解してそれぞれの部門が何をすべきかを示すという流れで策定されます。

   この方法では戦略や施策を網羅的に抽出できる半面、網羅的であるがために戦略の優先
   順位がつけにくく、総花的な計画になってしまう可能性があります。

   また、部門ごとに必要な施策が設定されるため、それぞれの部門が何をなすべきかに
   ついては明確ですが、結果として現場の改善課題一覧となってしまう可能性もあります。

   この場合、それぞれの改善が最終的にどの程度ビジョン実現につながるのかが不明確に
   なってしまいます。

   一方BSCを活用した中期経営計画では、ビジョン実現のための重要な経営課題をあらか
   じめ視点ごとに整理して絞り込んでおくため、その課題実現に向けて集中した取り組みが
   行いやすくなります。

   これから新たに中期経営計画を策定する場合や、既存の計画の見直しの際には、BSCの
   活用も検討してみましょう。

  □計画と進捗状況を「見える化」する

   中期経営計画にBSCを活用するもうひとつの大きなメリットは、課題解決の進捗状況が定
   量的に把握しやすくなることです。

   会社の状況を表す資料としてもっとも一般的なのは、貸借対照表や損益計算書などの財
   務指標でしょう。

   中期経営計画通りに自社の売上は増加しているのか、資産状況はどのように変化したの
   かなどは、社長にとって重大な関心事です。

   しかし、仮に各種の財務指標が計画通りに改善していないとしても、それが「なぜそう
   なっているのか」ということは財務指標だけから読み取ることは困難です。

   財務指標は会社活動の「結果」として表れますが、結果につながったさまざまな要因が
   どのように変化しているのか、結果との具体的な因果関係についてはわかりにくい
   ものです。

   そして、計画未達の本当の理由がわからない限り、有効な対策を講じることはできま
   せん。

   BSC活用によって財務指標以外の目に見えにくい部分も数値化することによって、
   「なぜ財務指標が改善していないのか」、「今どのような問題が、どの程度の深刻さで
   起こっているのか」、「最終的な財務指標にどのような影響を及ぼしそうなのか」などを
   把握し、より具体的な対策につなげることができます。
   
  ビジョンと戦略の明確化  

   1.ビジョンと戦略

     BSC作成にあたっては、まずはその前提となる自社のビジョンと戦略を明確化す
     る必要があります。

     ビジョンとは自分たちは将来こうなりたいという会社としてめざすべき姿であり、会
     社としての成長の方向性を決定づけるものです。

     また、戦略とはビジョン実現のためのいくつかの道筋のなかで、自社はどの道を選
     んでビジョンに近づいていくという基本的な方針です。

     たとえば、現在飲食店を経営している会社のビジョンとしては、「お客様に感動を
     与える地域一番のレストランになる」、そのための戦略としては、「他店にまねでき
     ないパフォーマンスの料理・接客を提供する」などが考えられます。
    
   2.SWOT分析による環境分析

     ビジョンや戦略検討のための代表的な手法としてSWOT分析があります。

     SWOT分析とは会社にとっての経営環境を内部環境・外部環境の2つに分けて、
     内部環境においては会社の強みと弱みを検討し、外部環境については、その会社
     にとって「追い風」となる機会と、「逆風」となる脅威を検討するものです。

     分析にあたっては、「S」、「W」、「0」、「T」のそれぞれの領域にあてはまる事
     項について一項目ずつ書き出して、その関係性(因果関係、主従関係、反対関係
     など)を整理して、グループ化したり、取捨選択をしていきます。

     そのなかで、
      ・ビジョンのあり方や実現可能性はどうか

      ・どのように「強み」をいかせば「機会」をものにできるか

      ・どのように「強み」をいかせば「脅威」を最小限にできるか

      ・どのように「機会」をいかせば「弱み」を克服できるか

      ・どのように「脅威」と「弱み」の影響を最小限にするか 

     などについての検討を行い、ビジョンやその実現に向けた戦略を決定します。

     なお、戦略については優先順位をつけて特に重要なもののみに絞り込み、経営資源を
     集中的に投下できるようにすることが大切です。

     ここで決定したビジョンと戦略について、BSCを使って4つの視点で整理・展開して
     いくことになります。

  □BSCの4つの視点

   1.4つの視点

     BSCは通常、(1)「財務」、(2)「顧客」、(3)「業務プロセス」、(4)「人材と変革」
     の4つの視点で構成されます。

     そして、それぞれの視点ごとにもっとも重要な目標として「戦略目標」を設定し
     ます。

    (1)財務の視点

      目標実現に向けて財務状況をどのように改善していくかという視点です。

      「収益の拡大」、「生産性の向上」、「財務体質の健全化」などがおもなテーマに
      なります。

    (2)顧客の視点

      財務の視点の目標実現のために、どのような顧客ニーズにいかに対応していくかと
      いう視点です。

      漠然と「顧客全般」と捉えるのではなく、まずは「どのような顧客に対して(絞り込
      む)か」を検討してターゲット層を特定したうえで、その層に対してどのような
      価値を、どのような形で提供していくかを考えることが重要になります。

    (3)業務プロセスの視点

      顧客の視点の目標実現のために、仕事の仕組みや流れなどを組織的にどのように改善
      していくかという視点です。

      顧客に満足してもらえる高品質の商品をいかに効率的に生産するかなどがおもなテーマ
      になります。

    (4)人材と変革の視点

      業務プロセスの視点の目標実現のために、ベースとなる力をどのように向上させて
      いくかという視点です。

      社員の意識改革、組織人としての基本動作、人材の専門能力、リーダーシップ、組織
      風土、情報システムなどがおもなテーマになります。

   このように、4つの視点はそれぞれ独立した並列の関係ではありません。

   財務はあくまで会社活動の「結果」ですから、それを向上させるためにはまず何が必要で
   あるかを考えると、それは売上の源泉となる顧客に直結します。

   そして顧客により高い価値を与えるためには社内での業務プロセスのあり方を変える必要
   があり、さらにそのためには人的な変革が必要です。

   逆の流れも同様に因果関係があります。

   たとえば、人的な変革はたんに特定の社員だけが属人的な際だった能力を獲得するので
   はなく、それが仕組みとして業務プロセス改善にいかされるものでなくてはなりません。

   このように4つの視点の整合性を保つことがBSCの考え方のなかでも大きなポイントとな
   っています。

  □戦略目標

   1戦略目標の展開

     4つの視点でそれぞれの戦略目標を明確に
     したら、それを実行していくための具体的な
     計画を策定していきます。

     以下、策定の手順を紹介します。 

    (1)重要成功要因と結果指標の設定

       戦略目標を実現するためにはさまざまな
       条件をクリアする必要がありますが、その
       なかでも特に重要と思われるポイントを「重要成功要因」として設定します。

       次に重要成功要因が実際にどの程度達成できたかを示す「結果指標」と具
       体的な「目標値」を設定します。

       目標値は中期経営計画終了時点だけではなく、最低でも期末ごとに設定
       する必要があります。

       また、目標値は実績値と比較可能にするために必ず定量化します。 

    (2)先行指標の設定(先行管理

       さらに結果指標の達成度合いをあらかじめ予測するために「先行指標」を
       設定します。

       先行指標は、「それがすべて達成されれば、自動的に結果指標が達成され
       る」という位置づけになります。

       先行指標についても定量化が必要であり、目標値の設定間隔は指標の種
       類によって四半期ごとや毎月などが考えられます。

       これによって、より短い間隔での進捗管理が可能になり、期末時点の結果
       指標達成の確度が高まります。

       経営者はすべての先行指標の達成状況を把握し、必要に応じて次の一手
       を講じる必要があります。

       達成状況が確実かつ迅速に社長のもとに届くための仕組みづくりも求めら
       れるでしょう。 

    (3)アクションプランの作成

       日々のアクションプランに落とし込みます。アクションプランでは「誰が、い 
       つまでに、何を、どうする」という具体的なレベルまで明らかにし、グラフな
       どで実行計画が一目でわかるようにしておきます。

       各部門のマネージャーは部下のアクションプランの実行状況を日常的に管
       理していく必要があります。

       アクションプラン作成にあたっては全社員参加型で各自の理解とモチべ−
       ションを高めながら行うことが重要になるでしょう。

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