段取り力は仕事力


  すべての仕事には目的があります。

  そして確実に、かつ短時間でその目的を達成するためには、実際の業務に取りかかる
  前に適切な段取りが不可欠です。

  しかし、社員のなかには段取りが苦手でいつも途中で業務手順の変更をせざるを得なく
  してしまう人や、まったくの段取りなしに動き出し、すぐに途方にくれてしまう人もいる
  のを見聞きします。

  段取りが上手な人は仕事が速いうえに、質も高いのが通常です。

  逆に段取りが苦手な人はそのいずれにも問題があるという結果になってしまいがちです。

  □段取り8分の仕事2分 

   仕事の事前準備の大切さを表す格言として、「段取り8分(ぶ)、仕事2分」があります。

   事前にきちんとした段取りさえしておけば、仕事の8割方は完了したということです。

   仕事に取りかかる前に、具体的に仕事を進める手順をきっちりと決めておけば、それ
   だけ仕事の質とスピードは上がります。

   もちろん実際に仕事に取りかかると予想外のことがたくさん起こります。

   途中で段取りを見直す必要もあるでしょうが、何の段取りもなしに仕事に取りかかるのは
   余りに非効率です。

   たとえば、家を建てるときは必ず設計図を書きます。

   そして必要な資材を準備し、工程表も作成したうえで、実際に家を建てる仕事に取り
   かかります。

   段取りを十分に行わずに仕事に着手することは、設計図なしで家を建てることと同じで、
   ありえないことです。

   段取りに使う時間は決して無駄、余分といったことではなく、その後の仕事をスムーズ
   に進めるための大切な準備プロセスなのです。

   段取りは「教える」のではなく「考えさせる」ことです。

   まずは部下に自分なりの段取りを考えさせる訓練が必要です。

   ロープレなどを通して、段取りの仕方そのものを身につけさせるのです。

   訓練を続けることで部下は段取りの大切さを実感します。

   また、営業マンとして「独り立ち」するためには、段取り力の習得が不可欠という認識を
   もたせることです。

   さらに自分自身で段取りするということは、与えられた仕事を自らが主体性をもって遂行
   することでもあります

   若手社員に対してはできるだけ早い時期から正しい段取りができるように訓練すること
   で、業務設計力だけではなく、自立心も高めることができます。

  □段取りの基本

   1.目的の明確化

     段取りの基本は自分がこれからやろうとしている仕事の目的をはっきりさせること
     です。

     目的が違えば必要な段取りはまったく異なるからです。

     たとえば、若手社員のA君とB君が自社の新製品を売り出すための販促企画書の
     作成を命じられたとしましょう。

     販促企画書作成の本来の目的は、「自社の新商品(製品)を売り出す」ことにあり
     ます。

     上司はそのための手段のひとつとして販促企画書作成を命じたに過ぎません。

     しかし、A君は目的そのものを「販促企画書を仕上げる」と捉え、B君は上司の意
     図通り「販売促進という目的達成のための手段として企画書を作成する」と捉えま
     した。

     この場合、A君の関心は「上司から指示された仕様通りに作成すること」のみなの
     に対して、B君はその販促企画書を使って、誰をどう説得するかという点にまで踏
     み込んで考えます。

     上司から指示された以外のデータを使うアイデアを思いつくこともあるでしょう。

     できあがってくる企画書の価値は自ずと違うはずです。

     社員には、自分が行っている仕事の本来の目的についてつねに考えさせることが
     大切です。

   2.2つの目標

     目標には大きく2つの目標があります。

     「行動目標」と「状況目標」です。

     本来的な目的である「状況目標」を達成するために、当面目指すべき成果が「行
     動目標」になります。

     前述の例でいえば、販促企画書作成が「行動目標」です。

     これは、「状況目標」のために、何をすべきか、具体的な行動で目標を立てること
     を言います。

     行動目標とはその名前のとおり、販促企画書をとにかく仕上げるという「行動」そ
     のものについての目標です。

     一方「状況目標」とは、行動目標が達成された結果、どのような状態になっている
     べきかという目標です。

     たとえば、販促企画書作成の状況目標としては、「上司の承認を得ている」、
     「企画会議で承認されて、具体的な行動に移る準備ができている」、「プロジェクト
     メンバー全員に情報が共有され、同意を得ている」といったことが考えられます。

     状況目標の達成は行動目標の達成よりも優先されます。

     膨大な販促企画書を書き上げて、行動目標を達成したとしても、それによって状況
     が進展しないのであれば、まったく意味がありません。

     状況目標は最終的なゴールで、そこへ向かっていくための具体的な目標が行動目
     標といえます。

     言い方を変えれば、行動目標は、状況目標を達成するための「やるべき事項リス
     ト」ということになります。

     段取りが苦手な人は「行動目標」と「状況目標」を混同してしまいます。

     2つの目標の違いを明確に認識させましょう。

   3.既存のノウハウを活用

     適切な段取りのためには、過去のノウハウを活用することです。

     「やるべき事項リスト(To Doリスト)」である行動目標をもう一度確認すると、そ
     の社員がゼロから始めなくてはならない仕事はほとんどないことが普通です。

     前述の例をとれば、販促企画書の作成にしろ、小売店への説明会にしろ、過去に
     誰かが同様のことを行っているはずです。

     先輩や同僚社員に声をかければ、過去に似たような業務をした人がいることも多
     いでしょう。

     これを利用しない手はありません。

     たとえ直接的に再利用できる資料がなくても、過去の経験から効率的に業務を行
     う方法についてアドバイスを受けられるかもしれません。

     あらかじめベテラン社員のノウハウをマニュアル化しておくことで、効率はさらに高
     まります。

     そして、どうしてもその社員自身がやらなければならない行動目標を並べて、「自
     分でやるべき事項リスト」を作成します。

     次にそれをどのような手順で、いつまでに行うかというスケジューリングを行って、
     段取りは完了します。

  □段取り力のレベルアップ

   1.標準化によるステップアップ

     段取りが習慣化していくと、「これまでよりもさらに短時間で効率的に成果にたどり
     着けないか」という意識が生まれてきます。

     たとえば、営業マンは、今営業をかけているAという顧客だけに目が行きがちです。

     適切な段取りを行って営業に成功したとしても、状況のまったく違う次のBという顧
     客に対しては、またゼロから段取りを考えなければなりません。

     これではいつまでたっても営業活動は効率的になりません。

     ではどうすればよいかというと、営業活動を標準化させ、凡人営業マンであっても
     優秀な家業マンと同程度の品質にすることで、「誰にでも売れるスタイル」に変えて
     いく、つまり仕組みを使った営業に変えていくのです。

     そして、仕組みをつくるとは、仕事をできるだけマニュアル(標準)化することで
     す。

     その際にはプロセス化とパターン化という考え方が重要になります

   2.集客から新規顧客獲得までのプロセスを標準(パターン)化
     営業活動を「集客(見込み客の開拓)」、「見込み客のニーズ把握」、「見込み客の
     信頼獲得」、「具体的提案」、「受注」といった具合なプロセスに分けて考えること
     です。

     そして、それぞれのプロセスを通過するために必要な条件を設定します。

     たとえば、どういう状態になったら見込み客の信頼を獲得したといえるのかについ
     てのチェック表を作成します。

     このチェック表が埋まれば具体的提案に進んでよいというわけです。

     次にパターン化ですが、これは顧客のタイプごとにいくつかの営業活動パターンを
     用意することです。

     たとえば、先方企業の社内手続きがネックになって、なかなか話が進まないとい

     うことがあり、先方が社内稟議を通しやすいような資料を作成して乗り切ったとし

     ます。

     おそらくこのようなパターンは今後もあるはずです。

     パターンごとにどうやって成功したかをきちんと記録し整理すること、つまり自分の
     活動記録を「データべ−ス化」していくことによって今後同様のパターンが発生した
     場合には即座に応用が利くことになるわけです。

     なお、ここでは営業活動を例にしましたが、会議などすべての仕事にはプロセスと
     パターンがあります。

     この考え方を用いれば仕事の効率は確実にアップします。

   3.自分にとっての段取りの「要(かなめ)」に力点を置く

     段取りにおいては目的達成までのプロセスのなかでもっとも難しそうな業務、
     つまり成果実現のための「要」を見極めることも大切です。

     これは一般論ではなく、現時点での自分自身の能力に当てはめて考えます。

     たとえば、「営業でもっとも重要なのはクロージングである」とよくいわれます。

     一般論としてはこれが「要」です。

     しかし、実際には、「第一印象をよくすることが苦手だが、いったん信頼してもらえ
     れば後はスムーズに進む」という営業マンもいるはずです。

     この営業マンにとっての「要」は「第一印象をよくすること」ということになりま
     す。

     このように自分自身の能力も考慮しながら「要」を設定することによって、もっとも
     力を入れるべきポイントがみえてきます。

     この点については、長期的な取り組み(改革)と短期的な取り組み(改善)に分けて
     考えます。

     「第一印象がよくない」営業マンであれば、本質的には話し方や態度などの改善で
     本当に印象をよくすることが「要」ですが、目の前の成果を出すためには、第一印
     象がよくないことを承知のうえで、「とにかくたくさんの飛び込み営業をする」と
     いう確率論の力を借りることも重要な「要」となります。

     また、クロージングが苦手な場合も、その能力を高めることが本当の「要」ですが、
     短期的には「クロージングは上司に任せる」と割り切れば、いかに多くの見込み客
     をよい状態で上司に引き継ぐかなどが当面の「要」ということになります。

     本来であれば自分の弱点を本質的に改善していくほうが好ましいですが、短期的
     な成果創出のためには、弱点を踏まえたうえでの段取りが必要な場合もあります。

     この状況の見極め自体も段取り力のひとつといえるのです。

   4.中堅、ベテラン社員の段取りをマニュアル化

     ベテラン社員は過去の経験の蓄積から、ほとんどの仕事について自分の頭のな
     かで段取りしています。

     そのなかにはベテラン社員本人は「当たり前」と感じていても、若手社員からみれ
     ば「すごい」と思えるノウハウが隠されていることがあります。

     このノウハウをマニュアル化して、積極的に共有していきます。

     ベテラン社員が実践しているステップとパターンを「見える化」するのです。

     マニュアル化は若手社員のためだけではなく、ベテラン社員が自分自身の仕事の
     仕方を振り返って改善するきっかけにもなります。

     ベテラン社員が長年の経験のなかで培ってきた「勘」などの文字化しにくい部分で
     ある暗黙知についても、具体的に記載(形式知化)することが大切です。

     マニュアルに盛り込むべき事項としては、

      ・業務全体の目的・概要

      ・目的達成までの基本ステップ

      ・各ステップの概要(行動目標・状態目標のチェックポイント)

      ・想定される問題と解決方法

      ・成功事例、失敗事例の要因分析

     があげられます。

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