公平な賃金制度


  賃金(給与)制度

   給与制度とは、従業員に対して支給する給与の決定方法や支払時期などを定めた
   制度です。

   給与は、生活保障、会社への貢献度、労働市場価値の考え方を中心に、年齢給や
   家族手当、職能給あるいは職務給などを組み合わせて構成します。

   支払時期や支払い方法についても個々の事情により異なります。

   また、どのような結果をどの給与要素に反映させるのかといった処遇の対象や、反映
   の際の方法論についてもさまざまなケースが見られます。

   中小企業の給与制度は、経営理念や人材ビジョン、事業特性、規模などにより各社
   (店)さまざまです。

   したがって、一概に「給与制度の一般的なものはこれです」とは言えません。

   ただし、業界特性や人数規模などで絞り込むと大枠はある程度類似しているかもし
   れません。

   給与制度や評価制度、資格制度などは、時代の流れで新しい考え方などが登場し、
   少しづつ変化していく傾向もあります。

   企業は給与制度を含む人事制度全体を一つのマネジメントツールと考え、自社(店)
   に合った制度、時代の流れに合った制度を構築していくことが望ましいと言えます。

   また、組織は常に変化していく「生き物」です。その「生き物」を成長させるマネジメン
   トツールの一つである給与制度も常に改善し、固定化しないことが重要です。

   就業規則の賃金に関する事項で、労働基準法で必ず
   定めなければならない事項として以下の4項目が就業
   規則に定められていれば、就業規則とは別に給与規
   程
を新たに定める必要はありません。

    1. 賃金の決定及び計算方法

    2.賃金の支払方法

    3.賃金の締切及び支払時期

    4.昇給に関する事項


   ただし、就業規則が膨大になりすぎる場合には、就業
   規則の本則で「賃金については別に定める」などのよう
   に記載し、「給与規程」を独立したものにする方が従業員に分かりやすく、改訂する
   場合も別規程だけを改正すればよいので便利です。

   特に賃金は従業員の生活に直接影響を及ぼし、不満や労働力意欲の低下につなが
   る恐れがあるため、別規程にして詳しく定めることが望ましいと言えます。
   (法改正により、どんな項目でも別規程にすることが可能。) 


   <総人件費管理>
    人件費は抑制傾向にあるのが一般的ですが、当然経営者にとって総人件費をマネ
   ージメントすることが必要です。

    特に、売上増が期待できない場合には、限られた給与原資のパイのなかで、いか
    に不満のない分配を行うかが経営者に課せられた課題です。

    したがって、「支払い能力」があることを前提に給与を支給することが代理店存続の
    視点から重要であると言えます。

    支払い能力をチェックする指標として、労働分配率がありますが、業種や規模によ
    り異なるものです。

    中小企業のケースでは労働分配率は50%前後を目安として考えるのが一般的です。 

    給与制度を定めることのメリットは以下のようなものです。

     (1) 給与を支払う条件を明らかにして従業員に安心感を与える。

     (2) 制度はシンプルにすれば従業員も生活設計がしやすい。

     (3) 制度が分かりやすくなれば従業員の仕事に対する士気が上がる。 

    各人の役割期待や業績目標を明確にし、その達成度に応じて公平に給与に格差
    が表れるようにする思想が成果主義です。

    給与は労働条件のなかで最も重要なポイントです。

    人は給与次第でやる気が出たり、無くなったりと、一番大きなモチベーターであると
    言えます。

    しかし、従業員が仕事を給与だけで決めるわけではないことも確かです。

    給与が多いことにこしたことはないのですが、その前に働きがい、やりがいのある
    仕事であるかどうか、やったことに対して納得できる評価がされているか、働きや
    すい職場環境であるか、といった自己実現の場や評価制度、職場環境がきちんと
    整備されていることが大切です。

  □最低賃金 令和3年度 地域別最低賃金改定(厚生労働省)
   100%成果主義の給与制度では業績が悪い月には最低賃金法に定められている
   最低賃金を下回る可能性もでてきます。

   したがって、固定給+成果給・歩合給などにするのが望ましいと言えます。

   (最低賃金法)
    賃金の最低額を保障することにより、労働者の生活を保障することを目的とした
    法律です。

    最低賃金は都道府県別に決定されています。

    対象となる賃金は、臨時の賃金、一ヶ月を超える期間を対象とする賃金(賞与な
    ど)、時間外・深夜割増賃金、休日割増賃金、通勤手当や家族手当などを除いた
    額です。

    パートやアルバイトを含む全ての労働者を対象としていますが、精神や身体の
    障害により労働能力が低い者や労働時間が
    短い人、試用期間中の人などは、適用外です。 

  □年俸制の導入について
   年俸制とは本来年単位で収入を決める制度
   のことですが、最近では実力主義給与制度
   の総称として用いられる傾向があります。

   年俸制の特徴として、実力・実績評価、総年
   収管理、毎年ゼロベースで評価することなど
   があげられます。

   ただし、毎年ゼロベースで評価するといっても
   年俸構成で保障給与的な固定部分が大きけ
   れば、ゼロベースの評価対象は残りの変動部分のみになってしまいます。

   公正で納得性の高い業績評価制度が定着していることが年俸制導入の前提です。

   また、給与体系の再構築や支給方法などをきちんと定め、制度化すること、そして
   導入されたら従業員が期待に応えるように目標管理などできちんとマネジメントする
   ことが大事です。

  ■退職金制度

   退職金を支給する制度を設けるかどうかは自由です。

   退職金制度は高度成長期に人材を確保することを主な目的として多くの企業に普
   及しました。

   支給方法には、退職のときに一括で支給する「一時金」と一定期間に支給する「年
   金」があります。

   退職金制度の種類には、従来の社内積立ての「退職給与引当金制度」は廃止され、
   外部積立ての「中小企業退職金共済制度」、「税制適格退職年金」、「厚生年金
   基金」があります。

   企業年金は改革の傾向にあり、確定給付企業年金や確定拠出年金(日本版40
   1k)へ移行されつつあります。

   <確定拠出年金制度(前払い)と確定給付企業年金制度(後払い)>

   2001年6月に確定拠出年金法と確定給付企業年金法が成立しました。

   確定拠出年金(いわゆる日本版401k)は、「拠出された掛金が個人ごとに明確に
   区分され、掛金とその運用収益との合計額を基に給付額が決定される年金」と定
   義されます。

   一方、「老後において毎年受け取る給付額を企業等が保証する」従来型の企業
   年金は、確定給付企業年金と呼ばれています。

   確定拠出年金制度の最大の特徴は、加入者が自分で指図して運用することにあ
   ります。

   給付は運用結果によって左右され、企業が追加の掛金負担をする必要はありません。 

   注意すべきことは、

    (1)基本となる給付金が60歳まで引き出しができないこと

    (2)年金資産に対して特別法人税が賦課されること

    (3)導入の際には、投資教育や管理手数料の負担につい
      ても十分に検討しておく

   一方、確定給付企業年金制度には、受託機関との契約をベースとする規約型と、
   独立した法人格を持つ企業年金基金を作る基金型の2つの方式があります。

   給付については、年金では原則60〜65歳の間で支給開始年齢を決める必要が
   あり、適格退職年金のように退職時からの単なる分割払いは認められません。

   加入期間が20年以上なら必ず年金を選択できる資格を与える必要
   があり、加入期間が3年以上で年金受給資格を得られない人には脱
   退一時金を支給する必要があります。

   <各退職金制度>

    ○厚生年金基金
     適格退職年金制度とならぶ代表的な企業年金制度。

     厚生年金という特別法人を設立し、厚生年金基金の
     掛金を社外(生命保険会 社・信託銀行等)に積み
     立てます。厚生年金保険の一部を国に代わって
     行う(代行部分)とともに、企業独自の年金を上乗
     せして給付を行う(プラスアルファ部分)ことで、
     従業員により高い給付が実現できるようになります。

    ○適格退職年金
     法人税法に基づき、企業が金融機関(生命保険
     会社・信託銀行等)と契約を結び、平準的に資金を
     積み立てていく年金制度。

     定められた適格要件を満たすことにより、税制の優遇措置が認められます。

     また「確定給付型」であるため、金利が下がると企業側の負担は増大します。

     確定給付企業年金法により新規設立は認められず、平成24年3月31日まで
     に他の制度に移行する必要があります。

    ○中小企業退職金共済制度
     中小企業退職金共済法に基づき、事業主が勤労者退職金共済機構と退職金
     共済契約を結び、従業員が退職したときは機構から退職金が支払われる制度。

     退職金額は基本退職金と付加退職金を合算した額となりますが、金利の変動に
     より将来の給付額が変わります。

     過去の勤務期間が通算でき、また中退共制度に加入している企業間を転職した
     場合は退職金を持ち運ぶことができます。

    ○確定拠出年金
     確定拠出年金法に基づく、新しい年金制度。毎月一定の掛金を負担して老後
     資金を積み立てます。掛金は債権や株式等で運用するため、同じ掛金負担
     でも運用実績により受け取る年金の額は異なります。企業型と個人型があり、
     運用リスクは加入者が負います。

     個人毎に残高管理するのでポータビリティー(転職時において年金資産を持ち
     運びできること)に優れます。

     まずは、貴社の退職金状況を再確認してみましょう。     

      ・現状でどれだけ退職金が準備されているのか?

      ・将来、今のままならどのくらい退職金は準備されるのか?

      ・今の方法でどのくらい退職金が足らなくなるのか?
   
  ■退職金の受け取り方

   退職金を一時金で受け取るか、年金で受け取るかについて悩む人も少なくありません。

   受け取り方法が一時金と年金の両方の制度を持つ会社であれば、どう受け取るかを選択
   しなければなりません。

  □退職金を一時金で受け取る
   退職一時金を受け取ると、「退職所得」として課税の対象になります。

   所得税の速算表 (令和3年) 

   上記速算表より、
   課税される所得金額=課税所得金額(a)×税率(b)−控除額(c)

   住民税は一律10%の税率で課税されますが、税額を10%軽減する措置が講じられてい
   ます。

    <退職所得の計算>
     退職所得=(退職一時金の額−退職所得控除額)×1/2

     「退職所得控除額」は、勤続20年までは1年につき40万円(ただし80万円に満た
     ない場合は80万円)、勤続年数が20年を超える部分は1年につき70万円を差し
     引くことができます。

     勤続年数で1年未満の端数が生じた場合は1年に切り上げます。

     源泉徴収のための退職所得控除額の表(令和4年分)

     現行制度では、「退職所得控除」を差し引くことができることです。

     勤続年数が長いほど差し引ける金額が多くなり、結果的に課税の対象を少なくす
     ることができ、その結果所得税・住民税が小さくなります。

     退職一時金の額が退職所得控除額以下であれば、実質的に課税されません。

     超えた場合でもその1/2が課税の所得金額となる点です。
  
     ただし、この措置を受けるためには、退職一時金を支払う会社に「退職所得の受
     給に関する申告書」を提出しなければなりません。

     退職金に対する課税は他の所得と合算しない「分離課税」となっています。

     その年に受け取った給与や公的年金など他の所得と合算しないので、税率が高く
     なることはありません。

  □退職金を年金で受け取る  
   退職年金は雑所得となり、公的年金に準じるという考え方で、次の算式で計算します。

   公的年金等に係る雑所得の速算表より
     雑所得=(a)×(b)−(c)

                
   実質的に課税されない場合も、

   「公的年金等の収入金額」には、厚生年金・国民年金等の公的年金が合算される
   ことです。

    ○65歳未満の場合:公的年金と退職年金の合計額が70万円以下

    ○65歳以上の場合:公的年金と退職年金の合計額が120万円以下


   算出した雑所得からの控除

    ○基礎控除(38万円)

    ○社会保険料を負担していればその全額が社会保険料控除

    ○要件を満たせば ⇒ ・配偶者控除(38万円)
                     ・配偶者特別控除(3万円〜38万円)
                      ・生命保険料控除(最高5万円)
                          ・個人年金保険料控除(最高5万円)
                          ・地震保険料控除(最高5万円)等

                                 (カッコ内の金額はいずれも所得税ベースで現在のもの。)


   したがって、状況によっては、退職年金と公的年金の収入合計額がもっと大きくても、
   実質的に課税されない分岐点となる額は大きくなります。

   受取総額を考えるなら、一時金よりも年金として受け取ったほうが多くなりますが、
   経営環境が悪化したときのリスクを考える必要があります。
    (退職後も、在職していた会社の経営状況をチェックしなくてはならない)

   2009年に報道された某航空会社の事例がその代表的なものです。

   退職金を一時金で受け取るか、年金で受け取るかの選択肢は、税金等を差し引いた後の
   実質の手取り額や、受取総額の相違などの「損得の問題」は重要ですが、退職後の長期
   的ライフプランを立て、上手に受け取ることも視野に入れて考えるべきでしょう。 

 


                         お問合せ・ご質問こちら 

                         メルマガ登録(無料)は こちらから   

 

賃金.gif
退職金.gif

お問合せ・ご相談はこちら

お電話でのお問合せ・ご相談はこちら
054-270-5009

静岡県静岡市のビジネス・ソリューション㈱です。
静岡・愛知県内、東京周辺を中心に中小規模企業の問題解決支援としてマーケティング・業務改善・リスクマネジメント
企業運営に欠かせない3つの仕組みづくりを支援いたします。
経営者にとって重要課題は会社をつぶさないことです。
しかし、毎年1万件以上の中小企業が倒産に見舞われています。
「知っていれば」「対策を講じていれば」倒産せずに済んだはずの企業が数
多くあったことを、私どもは見聞きしております。
少しでも多くの企業が、このような危機に見舞われず、最悪の事態を招く
ことのないよう、私ども専門家集団は事業運営に欠かすことのできない
マーケティング、業務改善、リスクマネジメントについて全力投球で支援
してまいります。

対応エリア
静岡・愛知県内、東京周辺

お気軽に
お問合せください

お電話でのお問合せ・相談予約

054-270-5009

 (コンサルティング部門 直通<柴田>)

新着情報

2024年4月19日
記事:「効率的な仕事の進め方 Ⅱ」更新しました。
2024年4月18日
記事:「メルマガ708号」 更新しました。
2024年4月18日
記事:「保険代理店 法人マーケットの攻略」更新しました。 
2024年4月17日
記事:会社を育てる」更新しました。
2024年4月15日
記事:「タイムマネジメント Ⅱ」 更新しました。
  • 詳細はこちらへ

ビジネス
ソリューション
仕組み構築

住所

〒422-8067
静岡県静岡市駿河区南町
2-26-501