労務トラブルの事例 残業・退職・解雇 


  会社経営におけるトラブルの種は、日々いたるところに転がっていると言っても過言では
  ありません。

  社内ルールが整備されていないことにより、契約内容があいまいなまま採用してしまい、
  お互いの認識の違いがトラブルに発展するケースです。

  例えば、給与30万円と決めた場合、30万円は支給総額なのか、手取りなのか、残業
  代を含むのか、基本給だけなのかというところなどは明確にする必要があるでしょう。

  特に残業代を含んでの契約の場合、給与のうちいくらが残業代なのか、何時間分なのか
  を明確にする必要があります。

  不幸にもトラブルとなり、不祥事として公になった場合、会社に与えるダメージは小さくあ
  りません。

  事前の防止策として、「コンプライアンス(法令遵守)経営」をいかに確立するかが企業の
  テーマとなっています。

  しかし、確かにコンプライアンスなどルールを守ることも大切ですが、それ以上に「不祥
  事を起こさせない」、「起こさない」環境づくりが大切です。

  小さな会社では、権限や仕事が経営幹部や一人の担当者に長年にわたって集中します。

  そのため、常に透明感のあるガラス張りの経営を心がけ、社員みんながチェックできる
  労務管理(仕組み)が必要です。

  労務管理は人が相手だけにとてもデリケートです。

  ちょっとしたボタンの掛け違いが後で尾を引きます。

  最近では、訴訟に関しても、以前のように労働組
  合という組織を通じて行われている訴訟ではなく、
  会社や使用者を相手にした個人的な訴訟であ
  るという点です。

  労働者個人が直接裁判所に労使問題を持ち
  込むケースが増加しているのです。

  会社と労働者の関係は円滑であることにこした
  ことはありません。

  しかし、会社がいくら誠意を尽くしても、労使間
  トラブルが起こることは少なくありません。

  このような場合、法律では、「個別労働関係紛
  争の当事者は、早期に誠意を持って、自主的な
  解決を図るように努めなければならない」と、
  当事者間での自主解決を促進しています。

  もちろん、労使間の話し合いによって自主解決に至ればいいのですが、どうしても解決
  できないことはあるものです。

  労務トラブルが年々増加傾向にありますが、そのほとんどが、「残業」に関すること、
  「解雇」や「退職」といった案件で発生しています。

  ここでは労務の3大トラブルである「残業」、「解雇」、「退職」について事例解説します。

   

残業問題 


  ■36協定

   36協定なしでは残業や休日出勤を命令できず、もし残業をさせ残業手当を払った
   なら違法です。

  □36協定に記載する項目

   ・ 残業、休日出勤の具体的理由

   ・残業、休日出勤の対象となる業務の種類

   ・残業、休日出勤する労働者の数

   ・残業できる時間
    (残業時間=労働時間−法定労働時間)

  □36協定の有効期間

    最長で1年間(有効期間が過ぎれば、「自動的に」無効になる)なので更新を忘れない
   こと。

   ○36協定なしで残業、休日出勤した場合

    ・「6ヶ月以下の懲役、または、30万円以下の罰金」となっています。

    ・残業、休日出勤を命じた部課長など(現場の責任者)、会社・社長の責任を取
     ることになり、処罰の対象となります。

    労働基準法(36協定)では、

     ○1週間で最大に働くことのできる労働時間・・・40時間

     ○1日で最大に働くことのできる労働時間・・・・8時間

    としています。 

    しかし、現実には残業はあり、労働時間の範囲を超えるため「所定の手続き」をとれ
    ば、残業を許可としたのです。 

    この「所定の手続き」とは「残業」と「休日出勤」に関して、会社と社員が事前に
    書面による協定を締結することが労働基準法第36条に規定されていることか 
    ら、通称「36(サブロク)協定」といいます。 

    これを所轄の労働基準監督署に届け出るのですが、36協定を出していない会社は
    かなり多くあります。

   少ない社員でさまざまな業務に当たらなければいけない中小企業にとって、残業の
   問題は頭の痛い問題です。

   しかし、コンプライアンスが重視される現在、たとえ中小企業であってもこの間題を
   あいまいにしておくことは大きなリスクとなります。

   労働基準法が改正され、より厳格な時間管理や残業代支給の運用が求められてい
   ます。

   整備が遅れている企業は早急な対策が必要です。 

   残業代の未払いやその計算方法の間違いが指摘されると、企業は過去2年間遡っ
   てその未払い分
の残業代を社員に支払わなければならなくなります。

   これは、企業にとって一時的に大きな出費となるだけでなく、「法律違反」を行っていた
   ことを労働基準監督署に指摘されたことが社員に知らされることとなり、会社と社員の
   信頼関係に大きな影響をおよぼすおそれがあります。

   平成20年4月から平成21年3月までの間に、割増賃金の不払により是正勧告された
   企業数は1,553社、対象労働者数180,730人、1企業の是正支払い額は平均額
   1,263万円となっています。(平成21年 厚生労働省発表)

   これは100万円以上の割増賃金の支払いを命じられた企業のみの統計であり、それ
   以下の小さな例をあわせると相当な数に上っていると思われます。

   残業代をめぐる労務トラブルは増える傾向にあり、労働審判や労働裁判、あるいは誰
   でも加入できる一般の労働組合による残業代未払い問題の団体交渉も増えていると
   言われています。

   インターネットなどで誰もがこのような情報を得ることができるようになった今の時代、
   企業は社員に対して、より明確に残業代について説明できるように、そのルールを
   整備し、万が一法律に違反しているおそれがあれば、早急に改善する必要がある
   のです。

   実質的には管理監督者でない労働者を管理監督者という名目にして、残業代を払
   わないケースが目立ち始め社会問題となりました。

   いわゆる「名ばかり管理職」の問題です。

   現在、通達や裁判例から、次のように管理監督者は定義されています。

   管理監督者の範囲について、「経営と一体的な立場にある者の意であり、これに該当
   するかどうかは、名称にとらわれず、その職務と職責、勤務態様、その地位にふさわ
   しい待遇がなされているか否か等、実態に照らして判断すべき」となっています。
   
  ■管理監督者

   2008年の1月にマクドナルドの管理監督者をめぐる判決が労働者側の勝訴となり、
   マスコミでも管理監督者の問題がさかんに取り上げられ、さらに4月と9月の1年
   に2回も管理監督者に関する通達が厚生労働省から出されるなどということも
   あり、この問題について多くの関心が寄せられています。

   労基法第41条には、「〜略〜労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各
   号の一に該当する労働者については適用しない。」とあり、その第2号で「事業の
   種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事項を取り扱う
   者」となっています。

   この条文の「監督若しくは管理の地位にある者」に対しては、時間外労働、休日
   労働の割増賃金を支払わなくて良い、という解釈が企業側からなされ、企業が管理
   監督者とした従業員に対しては、1日何時間労働しても、休日に出勤しても、割増

   賃金を支払わない、というケースが多々みられ、労使の間の紛争になっています。

  □管理監督者としての目安

   管理監督者に関しては、旧労働省が昭和22年に通達を出しています。

    1.経営者と一体的な立場

    2.労働時間が管理されない

    3.管理職としてのふさわしい待遇

   以上の3点です。

   より具体的には、次の通りです。

    ・会社の経営方針の決定過程に参加しているか。
     役員会議等に出席しているか等

    ・出退勤は自由か、会社から管理されていないか。
     減給の対象になるか、人事考課等の場合に不利益になるか。

    ・採用権限は有しているか
     将来、幹部社員に昇格していくような社員を採用する権限はあるか。

    ・職務の重要性にふさわしい十分な役職分の手当てが支給されているか。
     一般社員の平均残業代より手当が低額になっていないか。
     役職手当の有無、賃金制度・賞与制度等が、非管理職と異なる処遇体系か。

    ・管理下にある部下の人事権を有しているか
     部下に関する採用、昇進、配置などの人事権を有しているか。

    ・仕事内容が管理監督者としてふさわしいか。
     業務の客観的な内容、業務に関する決定権の有無、予算裁量権は有して
     いるか。
 
   以上は、あくまで目安ですが、これらの要素を総合的に勘案して判断されます。

  □管理監督者の定義

   (1)経営方針の決定に参画、または労務管理上の指揮権限を有しているか

   (2)出退勤について厳格な規制を受けず、自己の勤務時間について自由裁量を
     有する地位にあるか

   (3)職務の重要性に見合う十分な役付手当等が支給されているか

   (4)給与・賞与等について一般労働者に比べて優遇措置が講じられているか


  ■残業代問題対策

   厚生労働省は、「賃金不払残業」の解消を図るために、次の
   4点の指針を示しています。

   各企業はこれを参考に具体的な対策を立てていくことが必
   要でしょう。

    (1)労働時間の適正把握に関する基準の遵守

    (2)職場風土の改革

      賃金不払残業の背景には、職場の中に賃金不払残業が
      存在することはやむを得ないとの労使双方の意識(職場
      風土)が反映されている場合が多いという点に問題があ
      ると考えられます。

      こうした土壌をなくしていくため、労使は、次に掲げるような
      取組を行うことが望ましいでしょう。

       ・経営トップ自らによる決意表明や社内巡視等による実態の把握

       ・労使合意による賃金不払残業撲滅の宣言

       ・企業内又は労働組合内での教育

    (3)適正に労働時間の管理を行うためのシステムの整備

      賃金不払残業が行われることのない職場を創るためには、職場において適
      正に労働時間を管理するシステムを確立し、定着させる必要があります。

      できれば客観的な記録が残り、処理も行いやすいタイムカードなどのシステム
      を導入することが望ましいでしょう。

    (4)労働時間を適正に把握するための責任体制の明確化とチェック体制の整備

      労働時間を適正に把握し、賃金不払残業の解消を図るためには、事業場ご
      とに労働時間の管理の責任者を明確にしておくことが必要です。

      さらに、相談窓口を設置する等により賃金不払残業の実態を積極的に把握す
      る体制を確立することが重要です。


   最近は、業績の悪化に伴い社員の給与を下げざるを得ない会社も少なくありません。

   労働契約法では「労働契約は当事者の合意により変更することができる」(労働契約
   法第8条)と定められており、当事者である会社と労働者の合意がなければ、会社が勝
   手に賃金を不利益に変更することはできません。

   賃金カットを行う際は、会社は必ず社員の個別同意を書面で得ておくべきでしょう。

   労働条件の変更を行う場合は、会社は必ず給与規程などを整備し、社員全員に説明を
   行ったうえで、不利益変更の対象となる社員の個別同意を書面で得ておくべきでしょう。

   就業規則での不利益変更が認められるための判断基準

    ①社員の受ける不利益の程度

    ②労働条件の変更の必要性

    ③変更後の就業規則の内容の相当性

    ④労働組合等との交渉の状況

    ⑤その他の就業規則の変更に係る事情

   上記①〜⑤の事情を検討し、それが合理的である場合は就業規則の不利益変更も認
   められます。

        

退職問題 


  労働基準法では、社員を雇い入れる際は、使用者側(つまり会社)が、書面でいわゆる
  「労働条件通知書」などの書面を発行し、労働条件などを明示しなければいけないとい
  う定めがあります。

  しかし、退職時には、労働者が退職証明書などを求めない限り、退職する労働者と会社
  が書面のやりとりをしなければいけないという定めは特にありません。

  退職する際に「退職届」を労働者が会社に提出することは、一般的ではありますが、
  退職届の提出などがなくても、退職は正当に成立してしまうのです。

  しかし、労働者が退職する際は、会社側は当然「いつ」「誰が」「どのような事由で」退職
  するのかということを証明する書類を発行するか、提出してもらうようにすべきでしょう。

  後々、退職事由や退職日などをめぐってトラブルとなることは少なくありません。

  期間に定めのない社員(いわゆる正社員)の退職事由は、定年を除くと大きくわけて3つ
  考えられます。

  1つめは「自己都合退職」、2つめは「解雇」、そして3つめが「会社都合の同意退職(退職
  勧奨の受け入れ)」です。 


  ■自己都合退職の場合

   自己都合退職とは、その名のとおり社員自らの意思によって退職することです。

   自己都合退職の場合は大きなトラブルになることは少ないと考えられますが、それでも
   退職日や退職理由について、会社と社員は共通の認識を持っておかなければならない
   でしょう。

   特に、会社としては次の点を確認し、本人にその
   申し出が受理されたことを伝えておくことが重要
   です。

    ・退職理由が「自己都合退職」であること

    ・退職日および実際の最終出勤日

    ・重要な引き継ぎ事項

   しばしば見られるトラブルとして、退職を申し出た
   社員がそれを撤回するというケースがあります。

   社員の退職が成立するのは、本人が会社に退職の
   意思を伝え、それを会社が認めた時です。 

   「会社が認めた時」とは、一定の権限者に退職の
   意思が届き、了承した時のことを意味します。

   つまり、会社の代表者もしくは人事担当取締役や人事部長など、退職を了承する権限
   をもっている人物が退職を認めた場合にはじめて正式に退職が決定されるのです。

   正式に会社の人事権限者まで伝わっていないケースでは、その退職は正式に決定した
   ものではなく、本人が退職の意図を撤回したいと考えた場合は撤回することができる
   のです。

   一方で、書面がなくても退職の意思が明確に人事権限者に伝われば、退職は有効に成
   立します。  

   ただ、「言った、言わない」となってしまうことも少なくないため、やはり書面で退職
   願
を提出してもらうようにするべきでしょう。 

   退職願は労働契約の合意解約の申入れに用いるもので、退職届は労働契約解約の一
   方的意思表示に用いるものです。


  ■解雇の場合

   自己都合退職に対して、解雇は非常に大きなトラブルになることがあり、会社としては
   リスク回避のために、決定したことはしっかりと書面にしておく必要があります。

   解雇とは会社からの一方的な契約解除をいい、労働者の同意を得ないものです。

   そのため解雇は「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められな
   い場合は、その権利を濫用したものとして、無効(労働契約法第16条)」となってしまい
   ます。

   よって、会社は解雇となる事由は就業規則にできるだけ具体的に明記し、それを周知
   するとともに、入社時には労働条件通知書などで明示しておかなければなりません。

   この解雇事由は、想定される事由はできるだけ多く列挙し、また、その後も事例が発生
   するたびに随時追加しておくべきでしょう。

   実際に解雇を行う場合は、その解雇事由と解雇日、そして解雇通知日を明確にした
   雇予告通知書
を交付して30日前に解雇予告を行うか、即時解雇の場合は解雇通知書
   を交付し、平均賃金の30日分の解雇予告手当を支払う必要があるのです。


  ■会社都合の同意退職(退職勧奨の受け入れ)

   会社都合退職といえば解雇と思いがちですが、実は退職勧奨という方法もあります。

   退職勧奨とは、会社が社員に「退職をして欲しい」とお願いし、それを社員が受け入れ、
   会社都合の「同意退職」として処理するものです。

   「同意退職」であることが、会社からの一方的な労働契約解除である解雇とは大きく違
   う点です。

   実は、これは、会社にとって非常に大きなリスクを回避することになるのです。

   解雇の場合に元社員が解雇理由に納得しなければ、裁判所などに「解雇無効」を訴え
   られることもあります。

   会社はその解雇が「客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当である」ことをプロ
   セスも含めて証明しなければなりません。

   しかし、現在の労働裁判の判例を見る限り、その認定は非常に厳しいものであり、
   「解雇権の濫用」により解雇無効となるケースは決して少なくないのです。

   万一、解雇した社員が解雇無効で会社を訴え、それを裁判所が認めた場合(不当解雇
   であったと裁判所が認定した場合)は、会社は解雇した日から職場復帰の日にいたる
   まで、その社員の給料を支払い、元の職場に復帰させなければなりません。

   このようなリスクのある解雇を行う前に、会社が社員との話し合いにより「同意」を得る
   退職勧奨を行うべきケースは、実は多く存在するのです。

   解雇はあくまでも最後の手段と考えるべきです。

   なお、退職勧奨は会社都合の退職になるので、退職した労働者は「解雇」の場合と同じ
   くハローワークでは「特定受給資格者」として扱われます。

   したがって原則として3カ月間を待つことなく、すぐに雇用保険の基本手当(いわゆる失
   業保険)を受給することができます。

   また、勤続年数にもよりますが、基本手当が受給される期間も自己都合退職の場合よ
   り長くなることが多いのです。

   どうしても社員に退職してもらわなければいけない場合は、これらのこともしっかりと
   本人に伝えた上で、退職勧奨に同意してもらう努力を会社は行うべきでしょう。
   退職勧奨で同意退職となった場合は、後々トラブルとならないように必ず退職勧奨
   
同意書」に本人の署名、捺印をしてもらい、本人が退職勧奨を受け入れての同意  
   退職であることを明確にしておく必要があります。

   なお、退職証明書とは、上記退職書類とは別に、退職者が会社に請求することができ
   る書類です。

   この請求に対して、雇用していた会社は、できるだけ早く退職証明書を発行する義務が
   あります。


  ■退職時の覚書

   退職時には、上記で紹介した書類の他に「覚書」や「誓約書」といった形式で、退職後
   の約束についても書面で残しておくことが一般的です。

   これについても「義務」ではありませんが、後々のトラブルを防ぐためにも会社としては
   準備をしておいたほうがいいでしょう。

   □退職に関する覚書

    退職後も会社に迷惑をかけるような行為をしないという約束を交わす書類です。

    退職時の誓約書として書いてもらうこともあります。

     ・秘密情報の保持

      退職後も、仕事上知り得た秘密情報を保持し、開示しないという誓約

      秘密保持誓約書(営業、製造・技術)

     ・成果物などの帰属

      仕事上取り扱った事項の著作権、その他の権利が会社にあるという確認

     ・競業避止義務

      退職後、同業他社への就職などを一定の範囲で制限するという確認

     ・紛争の有無

      退職者と本人との間に、お金の貸し借りなどの紛争が−切ないことの確認

     ・退職後の名誉毀損行動・発言

      退職後も、会社の名誉を傷つけるようなインターネットへの投稿や発言などを
      しないことの確認

   これらの書式については、原則的に自筆の署名があれば法律的には真正なものとみ
   なされますが、捺印があればよりその意思がはっきりしたものであると認められます。

   よって重要な書面には、本人の自筆の署名と捺印を求めるべきです。

   

解雇問題 


  解雇とは、使用者の一方的意思表示により労働関係を将来に向けて終了させる行為
  (解雇権の行使)です。

  社員からの意思表示でなされる退職や、一定の年齢がきて退職となる定年退職とは区別
  されます。

  しかし、この解雇を巡り、しばしば使用者と労働者の間で争いが生じます。

  個別労働紛争解決制度(注)の利用状況で、平成18年度の民事上の個別労働紛争に関
  する相談件数は18万7,387件で、そのうち解雇に関するものが23.8%と最も多くなっ
  ています。(厚生労働省発表 平成19年5月25日) 


  ■解雇を行う場合のルール

   会社は社員を解雇しようとする場合、

    (1)30日前には解雇する旨を伝える

      ○この30日はカレンダー通りで計算

      ○実際の労働日、有給休暇で休んだ日は関係ない(単純に30日前)

      ○解雇を伝えた日は30日にカウントしない(初日は不算入)

    (2)30日前に予告しない場合、30日分以上の平均賃金を支払う

      ○30日前に解雇を予告しない場合、解雇予告手当は解雇日に支払う

      ○即日解雇の場合が該当

    (3)(1)+(2)の方式

      ○15日前に解雇を予告する

      ○解雇予告手当15日分を支払い、15日後に解雇
      ((1)+(2)が30日以上になっていればいい)

      解雇の意思を社員に伝えたら、自動的に30日後
      には解雇の効力が生じます。


    □解雇の予告が必要ない場合

     ○天災などで事業の継続が不可能になった場合

      ・地震、洪水など

     ○社員に下記のような重大な過失がある場合

      ・窃盗、横領、傷害などの罪を犯した

      ・賭博などの行為

      ・採用時の経歴詐称

     この2つの場合、解雇を事前に伝える必要は
     なく、いきなり解雇してもいいのです。

     ただし、解雇前に労働基準監督署の認定を受ける必要があります。

  □解雇の予告そのものが必要ない人

   ○日雇いの人

   ○2ヶ月以内の短期の契約社員

   ○出稼ぎ労働者(4ヶ月以内の契約で働く人、いわゆる季節労働者)

   ○試用期間中で、入社して14日以内の人

   ○解雇する理由を説明し、弁明する機会を与えなければ、解雇できない

   ○解雇する理由を記載した解雇理由証明書を交付する

  □解雇までの対応

   ○就業規則に解雇となる理由を詳細に記載する

   ○解雇に至るまでの社員と会社の対応を記録する

   ○事前に解雇の理由を社員に通知

  □具体的事実を証拠として残しておく

   ○遅刻、早退の回数と注意、指導の状況

   ○仕事のミスの内容、事後対応、改善されない事情

   ○反省文や始末書等の文書の保管

  □解雇の有効性

   ○問題の発言が多い

   ○短期間に多くの問題を起こしている

   ○度重なる指摘、注意、警告に関わらず改善できない

  □早急な対応を求めすぎない

   ○問題行動が就業規則の解雇理由に該当することを伝える

   ○問題行動があったら、日時、内容を記録する

   ○注意等に対する対応を記録する 

   ○処分を行う場合は文書等で行なう 

   ○ある程度の期間は辛抱し、証拠を積み上げる

   ○最終判断を下す時は、厳しい態度で望む

   ○感情的にならない      

   社員が問題を起こし、強引に辞めさせようとするケースが多いようですが、最近では
   ネットから情報を集め、情報武装するケースもあり、「不当解雇」で訴えられる可能性
   も高くなってきています。

   争いになったとき、就業規則の内容の甘さや感情的な対応が敗因となるのです。

   社員の解雇ほど厄介な問題はありません。

   円滑に進めばいいのですが、トラブルになると、多大な時間、労力、金銭が必要に
   なります。

   しかも解雇する社員と経営者だけの問題にとどまりません。

   企業外の労働組合はひとりでも自由に加入できますので、たとえ組合のない企業でも、
   その社員が加入することによって企業外労働組合から団交を申し入れられるという事
   態も考えられます。

   まわりの社員への影響もあります。

   あまりにも強引で不合理な解雇は、他の社員へ悪影響を及ぼします。

   簡単に社員を解雇するなどと思われては、組織の運営上好ましくありません。

   解雇についてのトラブルは、実のところそのほとんどが、経営者と社員の人間関係
   の悪さに原因
があります。

   まず、以下の点についてチェックしてみてください。

    ①社員に会社のルール(社員の評価制度や就業規則)、規則を理解してもらっ
     ているか?

    ②常日ごろ円滑な労使関係は維持されているか?

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