企業の安定経営には安全運転管理と車両管理規定の整備 


  安全運転管理は企業が安定経営を目指す上では、避けなければならない「最も差し迫っ
  た重要なリスク」のひとつになっています。

  社内における安全対策のうち、安全運転管理がおざなりになりがちです。

  ■企業を守る安全運転管理

   企業活動において、自動車の利用は避けられないものですが、ひとたび交通事故がお
   きると、直接的・間接的に大きな損害を被ることになります。

   取引先・地域社会への信用喪失等も考えられ、企業活動に大きな影響を与えることも
   考えられます。

   しかし、事故防止は、一朝一夕に実現できるものではなく、計画的な取り組みが必要
   です。

   自社の実態に応じた取り組み、あるいは管理体制の改善などを、総合的に取り組むこ
   とにより効果的に事故の低減が実現できます。

   自動車保険に加入していても、役職員が交通事故を起こした場合、企業では、避け
   られない様々な責任やそれに伴う大きな損失が発生します。

   保険で事故の発生は防げません!「交通事故を絶対に起こさない」ための運転者への
   安全教育・指導は、企業の安定経営のために欠くことのできない重要課題となってい
   ます。 

  ■事故が及ぼす企業の責任と損失

  □刑事上の責任

   危険な運転、違反行為の下命・容認の禁止(道交法)

   企業が事故の原因となる交通法規違反などを下命・容認した場合には責任者に対し
   懲役・罰金刑が科せられる。

  □民事上の責任

   被害者に対する損害賠償

   ・使用者責任(民法715条)

    従業員が業務中に過失により自動車事故を起こした場合、使用者はその損害を
    賠償する責任を負う。 

   ・運行供用者責任(自賠法3条)

    自己のために自動車を運行の用に供する者は、その自動車の運行によって事
    故を起こした場合、人身に関する損害について賠償する責任を負う。

  □行政上の責任

   危険な運転、違反行為の下命・容認の禁止(道交法)

   事故・違反をすると、運転免許の停止、取消の処分

   違反運転の下命・容認の禁止(道交法)

   違反運転の下命・容認によって自動車事故を
   起こした場合、処分される。(使用制限処分)

  □操業力の低下

   代替要員や車両の確保などの必要性が発生
   する。

  □解決のためのコスト

   被害者への見舞い、行政からの取り調べな
   ど、多大な時間・精神的コストが生じる。

  □社会的信用の低下

   取引先、顧客、社会への信用力の低下を招き、
   さらには求人などにも影響が生じる。  

   従業員が業務中に自動車事故を起こすと、企業
   にも修理費や治療費などの直接的な損失や間接
   的な損失が発生します。

   保険でカバーできるのはその一部に限られています。

   損失は近年ますます大きくなっており、時には巨額の賠償金の負担や信用の失墜が
   経営を脅かすことさえあります。

   「企業経営にとっては、100万円の利益を出すことと、100万円の損失を未然に防ぐ
   ことは同じ価値を持っている」の言葉にあるように、対策を講じることが急務となる。

  ■安全運転管理者責任

   平成19年から平成21年までの3年間で、安全運転管理者等が違反取締を受けたのは
   3090件です。

   この管理者等への取締りの多くは、社員による交通事故や違反をキッカケとしたもの
   です。

   道路交通法75条において、使用者・安全運転管理者・自動車の運行を直接管理する地
   位にある者が、以下の違反行為を命じたり、容認(黙認)した場合、刑事罰の対象とな
   る場合があります。

   (飲酒運転、過労運転、無免許運転、無資格運転、最高速度超過運転、過積載運
   転、放置行為)

   管理者等への刑事罰と合わせて、会社に対する自動車の使用制限命令や管理者
   等に対する免許停止の行政処分の対象となります。

  年々上がる賠償金額

   自動車事故を起こすと、自分と相手方双方の入通院治療費・付添看護料、修理費・代車
   料等に加え、休業補償・逸失利益や慰謝料等を被害者に支払わなければならず、これら
   費用は年々高額になってきています。

   対人事故では1億円以上の損害額を認定した判例がいくつも出ており、対物事故でも
   1千万円以上の賠償金を請求されるケースも少なくありません。


   安全運転管理は 

    車両管理規程社内規定) × 安全教育(訓練) × 保険 

   による3点の一元管理が必須です。
   
  ■マイカー(従業員)管理の重要性

   従業員がマイカーで起こした事故について、通勤途上の事故はもちろん、私用運転中
   に起こした事故でも企業に責任が及んだ例があり、企業のイメージを低下させるなど
   の影響も大きくなっています。

   CSR(企業の社会的責任)、コンプライアンス(法令遵守)など企業の守るべきルール
   はますます厳しくなってきています。

   近年では、通勤途上、さらには私用での運転中も含め、安全対策に力を入れる企業が
   増えてきている。

   以下に、貴社におけるマイカー管理の対策例を掲載しておきます。

  □基本方針(例)

   自動車事故対策は、全社で方向を明確に定めることによって効果的に推進すること
   ができます。

   事故が少ない企業の多くは、安全重視を全社に浸透させています。

   事故を激減させることに成功した多くの企業で、「トップが毅然とした姿勢で安全対策
   を推進したこと」を要因にあげています。

    ○従業員の交通事故も社会的問題であり、企業にとってのダメージになるため、
     取り組む必要がある。

    ○事故・違反は本人・家族の問題だけでなく、直ちに業務にも影響があるため、
     自社の問題として真剣に取り組む。

    ○地域社会の信頼を得ることは、円滑な事業運営に極めて重要である。

    ○「交通安全は社会正義」であり、企業の重要命題として全社員に徹底する。

    ○社長が全社に「交通事故は反社会的な行為であって、何人たりともこれを起こ
     してはならない」と決意表明。

    ○交通事故および交通違反を未然に防止し、社会的責任を全うする。

  マイカー通勤管理

   通勤でマイカーを運転している際に事故を起こした場合、私用運転中以上に企業に大
   きく影響を及ぼすおそれがあります。

   原則としてマイカー通勤を禁止している企業が多いようです。

   公共交通の利便性等の問題からマイカー通勤が不可避な場合は、一般に一定の条
   件を満たした者にのみ認める許可制度が導入されています。

   マイカー通勤を認めている企業の多くは、十分に管理・指導できるようルールを定め
   ています。

   <マイカー通勤許可の手続き(例)>

    ○マイカー通勤開始時に、安全に運転する旨の誓約書を提出させる。

    ○申請書・誓約書・任意保険証券(対人無制限、対物1000万円以上)の写を提 
     出させて許可する。

    ○許可基準を満たすことを条件に申請書を提出させ、車両をチェックのうえ許可
     する。
     許可した車両には「通勤許可シール」を貼付する。

    ○希望者は自動車教習所で添乗指導を受けて結果を所属部門長に届け出る。 
     任意保険の付保状況もチェックして交通安全委員会が許可する。

   <マイカー通勤許可の基準(例)>

    ○マイカー通勤は任意保険等の条件を満たして登録した従業員の車だけに許可
     する。

    ○道交法・社内交通規則の遵守、対人無制限・対物1000万以上の任意保険付
     保、車両通勤許可ステッカーの貼付、冬期の冬用
     タイヤ着用もしくはチェーン携帯を条件に
     許可する。

    ○社有車運転の認定を受けた人に限り、人
     事課長の承認を得たうえでマイカー通勤
     を許可する。

    ○入社後1年以上経過し、会社から半径6
     km以内に居住しておらず、運転免許取得
     後1年以上経過して無違反の者を対象に許
     可する。

    ○新入社員は、6カ月間はマイカー通勤を禁止
     する。

   <駐車場管理(例)>

    ○構内に十分な駐車スペースを確保する。

    ○事業所から徒歩8分のところに駐車場を確保する。駐車場から歩くのがいやな
     者は、自己負担で会社付近の駐車場を個人で賃借する。

    ○総務部が指定場所への駐車、所内入出時の車両チェックを行う。

   <車両管理(例)>

    ○マイカー通勤車両を台帳に登録、管理する。

    ○毎月1回、安全運転友の会の幹事が駐車場入り口に立ち、車両の登録を
     チェックする。

    ○駐車場で許可証掲示の有無、違法改造をチェックする。

    ○改造車は駐車場への乗り入れを禁止しており、発見時には通勤許可を取り消
     す。

    ○装着タイヤの点検、違法改造車両のチェックを日常的に実施する。

    ○月に3日「安全点検日」を指定する。

    ○毎日点検を実施する。

    ○抜き打ちで整備・清掃状況を検査する。

    ○週1回日を定めて、洗車・点検する。
      
   <マイカーの業務使用(例)>

    ○通勤車両の業務使用は禁止する。

    ○マイカーの業務使用は、通勤と別に1年ごとに認定する制度を設けている。

    ○マイカーの業務使用は、管理者が安全運転を見極めた上で許可する。

    ○1年間無事故・無違反のマイカー通勤者は、保険付保等一定の条件を満たし
     て登録するとマイカーを業務に使用できる。

    ○マイカーの業務使用は申請に基づいて許可する。使用の場合は走行距離に
     応じて手当てを支給する。

    ○片道75km以上の出張は原則として公共交通機関の利用を指導するが、マイ
     カー出張を許可する場合は上司が一言アドバイスする。
     定型出張先については出張路安全マップを作成し、安全走行を指導する。

  □安全運転管理(例)

   安全運転管理は、運転計画の策定や運転記録の活用、異常気象等緊急事態への対
   応などを行うものです。

   運転上の安全を確保するため、ルート等運転計画の策定、状況に応じた安全運転の
   指示、運転状況の確認等を行います。

  □運転者管理(例)

   十分な教育・指導を行うなどして、運転免許を保有しているだけでなく安全に運転でき
   ると認定できる者にのみ運転させる企業が増えています。

   運転者に事故を起こさず最適な状態で安全に運転させるためには、常に運転者の状
   態を把握して適切な管理・指導を行うことが求められます。

   また、事故・違反歴を把握し、一定の条件を超える者には安全講習の受講を義務づ
   けるなどの例があります。

    ○管理者が毎月1回、免許証の有効期間を確認して、記録表に押印する。

    ○24歳以下を対象に、個人別管理カードを作成する。 

    ○マイカー通勤者を対象に、視力・血圧等の健康チェックを行う。

   <違反者の措置(例)>

    ○違反があれば15分程度の面接をして注意を喚起する。

    ○1回目の違反で職制から指導、2回目の違反で1週間の立哨・マイカー乗り入
     れ禁止などの処分を課す。

    ○違反者には、委員会で懲戒適用の審議・決定を行う。

    ○違反はボーナス査定の減点項目としており、申告なく違反が発覚したり悪質な
     違反の場合は大幅に減額する。

   <飲酒管理(例)>

    ○警察の協力を受けて全社員参加で飲酒運転禁止の運動を展開する。
     飲酒運転をしない誓約文を警察に提出するとともに、全マイカー・社有車に
     シールを貼付している。

    ○飲酒運転防止のためにマイカーを置いて帰る場合は、事前に届け出させて駐
     車を許可する。

    ○年末年始に「飲酒運転追放カード」を配布する。 

     【飲酒運転者の措置(例)】

      ○道路交通法に違反し、飲酒運転などにて罰金および行政処分を受けたも
       のは休職若しくは降格、解雇に処する。(就業規則で規定)

      ○酒気帯び運転等をした者には、免職を含む厳しい処分を課す。

      ○飲酒運転をしたら解雇する。

      ○社内の準公的行事に関連して飲酒運転が起きた場合は、幹事にも連帯責
       任をとらせる。

      ○私用で飲酒運転をした場合、賞罰審査委員会で審議した結果を掲示板に
       名前・処分内容入りで掲示する。

       処分内容は、出勤停止、賞与カット、昇格試験の受験資格1年間剥奪な
       ど。

      ○飲酒運転で事故を起こした場合、事故の程度に応じて、当事者・管理者・
       経営者
に出勤停止、諭旨解雇・懲戒解雇・減給等の処分を課す。

      ○私用も含め、飲酒運転で人身事故を起こした者は懲戒解雇とする。(労働
       協約
に記載)


  □事故対応

   企業は、従業員がマイカーで起こした事故も把握しておくことが望まれます。

   効果の高い対策を立てるためには、過去に自
   社で発生した事故の原因を詳細に分析するこ
   とが有効です。

   そのため、事故の報告や事故事例の活用方法
   について、体系的に定めておくことが重要です。

   <事故の報告>

    ○事故・違反は、業務中・通勤途上・私用運転
     中を問わず、報告書の提出を義務づける。

    ○些細なものでも事故は全件報告させる。

    ○私用運転についても、被害事故も含めて詳細な事故報告書を提出させる。

    ○事故報告の提出を義務付ける。
     ただし、休日および帰宅後の事故は対象外にしている。

    ○通勤時の事故は加害・被害にかかわらず速やかに部門長経由で報告書を提
     出させる。
     私用運転でも警察署で人身事故として取り扱ったものや30日以上の行政処
     分を受けた場合は報告させる。

    ○再発防止対策も記入した事故報告書を提出させる。安全衛生委員会で、前月
     に発生した事故(私用運転中も含め、被害・加害を問わず、人身は全て、物損
     は20万円以上)を報告する。

    ○私用運転時、被害事故も含め、全件交通安全部会、全社安全衛生委員会(毎
     月開催)で報告する。

   <事故者の措置>

    ○加害事故を起こした者は、上司を通じて反省文を提出する。あわせて、上司の
     お詫び状、職場の対策も提出する。

    ○マイカーの乗り入れを、1〜3ケ月間(本人の判断による)自粛させる。

    ○マイカー通勤を1カ月間禁止し、毎朝の呼称確認リーダーや無事故記録の記
     入係を務めさせる。

    ○事故懲罰委員会でペナルティ(戒告、始末書、出勤停止、減給、降格)を決定
     する。

    ○事故の内容に応じて、2〜3週間の運転禁止、1ケ月間の社外清掃などを課
     す。

    ○重大事故の場合出社停止を含む厳しい処分を課す。

    ○過失割合50%以上の事故を起こした職場は、全員で通勤時に駐車場等で立
     哨する。

  □運転者教育

   運転は多くの場合、管理者等他の者の目が届かない所で単独で行うものであり、運
   転者に自主的に安全運転をさせなければなりません。

   運転者に安全運転の必要性を認識させるため、また自分の弱点を認識させて注意さ
   せるために、安全教育は欠かせません。

   <特定の層を対象とする教育>

    ○30歳以下には、全社員を対象とする研修に加え、社内講師による事故内容と
     判例に関する講習を年2回実施する。

    ○24歳以下の者は、参加・体験型交通安全研修に3〜4ケ月かけて全員派遣
     し、管理者がフォローする。

    ○運転記録証明書の内容に応じて対象者を選定し、社内講師が年1回研修を実
     施する。

  □事故防止活動

   事故の少ない企業に共通するのは、職場の安全意識が高いことです。

   職場の安全意識を高めるため、ポスター・スローガン等の広報活動、キャンペーンな
   どが広く行われています。

   運転者に安全運転の意識付けを図るひとつの手法として、優良運転者や職場の表彰
   制度を採用している例も多数あります。

   <表彰制度>

    ○5年間無事故・無違反の個人を表彰する。

    ○30年無事故・無違反の個人を表彰する。

    ○3、5、10、15年以上の無事故・無違反者を表彰し(3年以上あれば全て表彰
     対象になる)、それぞれ3千円、5千円、1万円、2万円の賞金を出す。

    ○「1年間第1・第2当事者の事故がない」「1年間第1当事者の事故がない」の2
     段階で交通安全優良職場を表彰する。

                        組織力強化マニュアルについてはこちら

                        お問合せ・ご質問こちら

                        メルマガ登録(無料)はこちらから  

 

交通事故.jpg

お問合せ・ご相談はこちら

お電話でのお問合せ・ご相談はこちら
054-270-5009

静岡県静岡市のビジネス・ソリューション㈱です。
静岡・愛知県内、東京周辺を中心に中小規模企業の問題解決支援としてマーケティング・業務改善・リスクマネジメント
企業運営に欠かせない3つの仕組みづくりを支援いたします。
経営者にとって重要課題は会社をつぶさないことです。
しかし、毎年1万件以上の中小企業が倒産に見舞われています。
「知っていれば」「対策を講じていれば」倒産せずに済んだはずの企業が数
多くあったことを、私どもは見聞きしております。
少しでも多くの企業が、このような危機に見舞われず、最悪の事態を招く
ことのないよう、私ども専門家集団は事業運営に欠かすことのできない
マーケティング、業務改善、リスクマネジメントについて全力投球で支援
してまいります。

対応エリア
静岡・愛知県内、東京周辺

お気軽に
お問合せください

お電話でのお問合せ・相談予約

054-270-5009

 (コンサルティング部門 直通<柴田>)

新着情報

2024年4月19日
記事:「効率的な仕事の進め方 Ⅱ」更新しました。
2024年4月18日
記事:「メルマガ708号」 更新しました。
2024年4月18日
記事:「保険代理店 法人マーケットの攻略」更新しました。 
2024年4月17日
記事:会社を育てる」更新しました。
2024年4月15日
記事:「タイムマネジメント Ⅱ」 更新しました。
  • 詳細はこちらへ

ビジネス
ソリューション
仕組み構築

住所

〒422-8067
静岡県静岡市駿河区南町
2-26-501